病院で処方される薬の広告を見たことがないのはなぜでしょうか。これは、医療分野の広告に関わる法律によって医師が処方する薬は、一般の方向けに広告できない決まりがあるからです。
広告デザイナーの中でも、医療やヘルスケア分野に特化した広告をデザインするデザイナーは「医療広告デザイナー」と呼ばれます。
医療広告デザイナーは、さまざまなメディアやジャンルで広告を制作します。医療広告デザイナーは医療という専門的な内容を正確でわかりやすく伝えるため、デザインのスキルだけでなく医療に関する知識やガイドラインの理解も必要です。
青野ともさん
この記事では医療広告デザイナーの仕事内容について紹介するとともに、医療広告デザイナーに必要なスキルと知識についても合わせて解説します。
Medi+「医療広告デザイン講座」講師
メディカルデザインラボ株式会社 代表取締役
北村 竜也(きたむら たつや)
Goodpatch Anywhere UXデザイナー
医療*デザインをコンセプトに医療機器・デジタルヘルスケア開発支援、ブランディングをはじめ、webサービスのUXデザイン、グラフィックデザインを行う。
2023年より神戸大学大学院医学研究科医療創成工学専攻に在学し、
脳神経、AIの研究を行っている。
会社HP/GoodpatchAnywhereインタビュー記事/SNS(X)
医療広告デザイナーの仕事とは
医療広告デザイナーは広告主(クライアント)や広告を見る人(ターゲット)のニーズに合わせて、医療やヘルスケアジャンルの広告をデザインします。ここでは、医療広告デザイナーの仕事内容はどのようなものがあるか、広告の種類やジャンル別にみていきましょう。
【種類別】医療広告デザイナーの仕事内容
医療広告デザイナーの仕事は、オンライン広告とオフライン広告の2つに分けられます。広告や制作物の種類による特徴と医療広告デザイナーの手がけるサービス内容の例は以下のとおりです。
広告の種類 | 特徴と目的 | 医療広告デザインとなる商品・サービス例 |
バナー広告 | Webサイトやアプリ内に表示されるクリックを誘導する画像・製品やサービスの紹介のため | ・医療機関・医療系サービスの提供企業 ・地域密着型の老人ホームやデイサービス、訪問介護サービス |
LP**広告 | 訪問者のアクション獲得に特化した縦長のページ・製品購入、サービス申し込み、問い合わせしてもらう | ・健康診断のプラン・サプリメントの商品紹介 ・美容外科、皮膚科、審美歯科などの治療内容の紹介 |
SNS広告 | SNSの投稿の間に表示・商品購入やキャンペーン情報の拡大 | ・治療法や医療機関のサービス説明 ・健康情報の提供 |
Webサイト | 商品や企業の全体的なブランドイメージを伝える・製品やサービスの紹介 | ・医療機関の理念や強み、紹介・健康食品の商品紹介 ・検査機器、治療機器、診断装置などの医療機器を取り扱う企業 |
デジタルサイネージ | ディスプレイなどの電子的な表示機器を使って情報を配信 | ・疾患や治療法、ヘルスケア商品の紹介 |
広告の種類 | 特徴と目的 | 医療広告デザインとなる商品 /サービス例 |
チラシ | ・目立つデザインと簡単な言葉で情報を伝える・健康促進キャンペーン、予防接種、検診啓発のため | ・健康教室の案内・患者支援団体 ・NPOによるイベントやキャンペーン案内 ・医療従事者向け研修やイベント案内 |
カタログ、パンフレット | ・製品やサービスの説明、特徴を伝える | ・医薬品や医療機器について商品紹介 ・医療保険やがん保険などのプロモーション |
ポスター | ・遠くからでもわかりやすい文字や画像 | ・市販薬やサプリメントの商品紹介 |
看板 | ・遠くからでもわかりやすい大きな文字や画像 | ・医療機関、老人ホームやデイサービスなどの開院時間や診療科の案内 |
新聞、テレビ、雑誌 | ・映像や文章で伝える ・認知度向上、販売促進のため | ・市販薬のテレビCM ・医療専門誌や健康雑誌の広告枠 |
【ジャンル別】医療広告デザイナーの仕事内容
医療広告のジャンルは医療従事者向けと一般消費者向けに分けられます。ジャンル別の医療広告デザイナーの仕事例は以下のとおりです。
ターゲット | ジャンル | 医療広告デザイン制作例 |
医療従事者向け | ・医療用医薬品 ・医療機器 | ・医療用医薬品のプロモーション資材 ・医療情報Webサイト医療従事者向けパンフレット ・セミナーチラシ ・取り扱い説明書 ・パッケージ |
一般消費者向け | ・医療機関 ・市販薬 ・医療機器 ・健康食品、サプリメント | ・クリニックのWebサイト ・市販薬のポスターやリーフレット ・商品紹介Webページ ・コンタクトレンズのパンフレット ・健康食品やサプリメントのLPやチラシ |
医療広告デザイナーの仕事の流れ
広告デザイナーはクライアントやターゲットのニーズを正確に把握し、広告を制作します。チームを組む場合もあれば、フリーランスとしてプロジェクトに携わる場合もあります。
以下は広告デザイナーの仕事の流れです。
- クライアントとの打合せ
ヒアリングによりクライアントのニーズを把握する - コンセプトを考える
ヒアリングの内容をもとにデザインの方向性を決める - デザイン制作
コンセプトに沿ったラフ案をまとめる。クライアントに広告デザインを提案。
修正と提案を繰り返し、最終デザインを確定。 - データ作成
メディアに合わせたデータを作成 - 納品
完成した広告を納品
クライアントの納得いくデザインになるよう、場合によっては何度か繰り返し提案と修正を行い、最終デザインを確定させます。デザイナーに医療業界の理解があると、クライアントのニーズを正確に捉えやすくなるでしょう。
青野ともさん
医療広告ガイドラインに詳しくないクライアントの場合、医療広告に詳しいデザイナーが入ることで事前に違反のリスクを減らせます。
その結果、クライアントとチームの間でコミュニケーションも取りやすくなり、スムーズに制作が進むでしょう。
医療広告デザイナーに必要なスキルと知識
医療広告は医療やヘルスケアといった専門的な分野の広告です。視覚的にわかりやすく伝えるためのデザインスキルだけでなく、医療広告をデザインする際は医療の知識とガイドラインや法律の理解が必要になるでしょう。
ここでは医療広告デザイナーに必要なスキルと知識について解説します。
デザインスキル
医療やヘルスケア分野を対象とした広告は、正確でわかりやすいデザインが求められます。医療広告デザイナーは、複雑で多くの情報を含む医療情報をイラストや画像を用いてターゲットにわかりやすく伝えられるスキルが必要です。
また、文章と画像のバランスや色合いなど、メディアごとに適したデザインを提案できるスキルも欠かせません。以下はデザインするために使用するツールの例です。
- Photoshop
- illustrator
- Figma など
青野ともさん
医療広告デザイナーはデザインスキルだけでなく、デザインに必要なツールを使いこなす技術も求められます。
ガイドラインや法律に関する知識
医療広告デザイナーには、医療に関するガイドラインや法律に関する知識が欠かせません。医療やヘルスケア分野の広告は、医療に関するガイドラインや法律に則って制作しなければならないためです。
医療やヘルスケア分野の広告は間違った情報や事実より大袈裟な表現をした場合、消費者に誤解を与え、健康被害が出る可能性があります。守るべき主なガイドラインや法律は医療広告ガイドライン、薬機法*、景品表示法**です。では、どのような医療広告が違反になるのでしょうか。[1][2][3]
青野ともさん
具体的な医療広告の違反事例は以下のとおりです。[4]
- バナー広告における費用の強調
キャンペーンや割引等の品位を損ねるおそれがある広告は控える - 加工・修正した術前術後の写真などの掲載
あたかも効果があるように見せるための加工・修正した写真は虚偽広告となる - 医療広告ガイドラインを遵守している旨を強調したデザイン
医療広告ガイドラインを遵守していることは強調すべきことではないため、文字の大きさや色などで強調するような表現は認められない。
医療の知識
医療に関わる広告は一般的な広告と異なり、人々の健康に直接関わります。ターゲットは一般の消費者だけではなく医療従事者の場合もあり、両者にわかりやすく正確な情報を伝えるためには医療の知識が必要です。
医療資格があれば医療の知識はもちろん、医療業界への理解があるため、現場での経験を活かした広告の制作が可能です。
青野ともさん
医療という専門的な分野でのデザインは、相手に商品やサービス内容を誤解なく伝えられる医療の知識が求められるでしょう。
医療資格を活かして医療広告デザイナーを目指そう
医療広告デザイナーは、さまざまな媒体で医療やヘルスケアに関する広告を制作しています。医療広告デザイナーはデザインスキルだけでなく医療に関する知識やガイドライン、法律などの理解も必要です。
青野ともさん
医療資格があると医療の知識や医療業界の理解もあるため、医療広告デザイナーは医療資格を活かして活躍できる仕事です。
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