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医療通訳の仕事とは?具体的な仕事内容や働き方を解説

医療通訳は医療資格を持っていることが強みになる仕事です。医療現場で培った経験と医療の知識は、医療通訳の仕事でも大いに役立ちます。通訳者が医療資格を持っているとわかれば「話がわかる人がきてくれた」と利用者の安心感が増すでしょう。

医療の知識があると、医療者による説明の理解が早く、患者の訴えに「察し」をつけやすくなります。患者の不安な気持ちを読み取る力や医療用語など、難しい言葉をわかりやすく伝えられる力があると、コミュニケーションがスムーズに進みます。

看護師ライター

桑野ナオさん

医療通訳は言葉を機械的に訳すだけの通訳者ではなく、医療者と患者をつなぐ医療資格+αの働き方です。

この記事では、医療通訳の具体的な仕事内容や働き方について解説します。

医療通訳の仕事とは?

医療通訳の代表的な仕事は、医療現場で医療者と外国人患者間の通訳です。病院・クリニックで医療通訳者として働く場合、どのような業務があるのか具体的に解説します。

ここではタイで医療通訳を利用していた、筆者の体験談を踏まえてお伝えさせていただきます。

一般的な診療における介入

日本語を母語としない患者が、初診で病院に来院したときから医療通訳の介入が始まります。言葉を理解できない患者にとって、母語でコミュニケーションがとれるとわかるだけでも大きな安心につながりますよね

以下は診療時における医療通訳の具体的な仕事内容です。

  • 初診時の事務的介入(通訳の必要性の確認、受付の案内、保険の提示など)[1][2]
  • 問診票記入(必要があれば聞き取り・補助説明)、受診診療科の選定[2][3]
  • 診察時の通訳[2][4]
  • 処方薬の説明[2][5]
  • 会計や保険の手続き[2][5]

入院や手術説明に関するサポート

患者の状態によっては、検査や入院が必要になることもあります。生活が関わってくる点が外来と入院の大きな違いと言えるでしょう。

外来での関わり以上に食事や生活習慣、宗教など、より総合的なケアが必要になります

看護師ライター

桑野ナオさん

医療ツーリズムの増加に伴い、日本に不慣れな外国人患者の対応も求められています。[6]

入院や手術説明の場では、医療通訳として以下のような仕事があります。

  • 検査、入院、手術等の説明の通訳[1][7]
  • 入院中の生活サポート[1]
  • 処方薬の説明[5]
  • 退院後の不安が最小限となるよう日常生活の注意事項などを説明[8]
  • 会計や保険の手続き[5]

病院外部機関との連絡

病院内だけでなく他院や保険会社など外部機関との連絡や、退院後に地域の医療機関と連携が必要な場合もあります。保険や社会制度の基礎的な知識があるとスムーズに通訳ができるでしょう。

看護師ライター

桑野ナオさん

日本国内に限らず、海外とのやり取りをしたり、患者から病院への問い合わせに対して電話やメールで対応したりすることもあります。

病院外部機関との連絡に関しては主に以下のような仕事があります。

  • 保険の手続き(日本国内外どちらも)[2][3][9]
  • 社会保障制度(母子保健や障害者手帳など)の説明や、自治体など外部機関とのやりとり[9][10]
  • 受診方法の説明[2][5]
  • 予約に関する対応[2]

医療通訳としての働き方

医療通訳の働き方には、日本で働く、海外で働くの二通りがあります。ここでは医療機関にフォーカスした働き方をご紹介します。

日本の医療機関に出向いて働く

日本で医療通訳として働く場合、対象は在日外国人や旅行客です。医療通訳の多くは仕事があるときに単発で病院やクリニックに出向く働き方です。病院に直接雇用される雇用形態はまだ多くありません[11]

通訳派遣会社などに登録をし、派遣要請があれば現場に直行直帰します。

看護師ライター

桑野ナオさん

緊急時や要請地が遠方で医療通訳者が出向けない場合は、電話やビデオ通話を利用した遠隔通訳もあります。

海外企業に属してリモートで働く

海外で働く場合、対象者は海外在住もしくは海外旅行中の日本人です。通訳者が現地で生活している場合は対面の仕事もあるでしょう。

アメリカで医療通訳士として働く場合、アメリカの医療通訳士の資格取得が必要です。資格があれば日本在住のままアメリカ企業に登録し、リモート通訳で仕事を受けられます

アメリカの医療機関では、患者から医療通訳士の要請があると通訳を介入させなければなりません。

看護師ライター

桑野ナオさん

日本語ネイティブの通訳者はまだ少ないため、需要は高いと言えるでしょう。

海外とのリモートは時差があるため働く時間調整が必要ですが、ライフスタイルに合わせた働き方ができるメリットとも言えますね。

医療通訳に必要なスキル

医療通訳の基本は「足さない、引かない、一言も漏らさない」と言われています。医療者と患者のどちらもが安心して会話が進められるよう「コミュニケーター」「カウンセラー」的な関わりも求められます。[12]

ここでは実際に医療通訳者として働く方の声をもとに、医療通訳に必要なスキルをご紹介します。

コミュニケーション力

医療通訳に求められるコミュニケーション力とは、単に言葉を訳すだけではありません。医療通訳においては場の雰囲気を読み、患者の言葉による訴え以外の情報を読み取る力が求められます[13]

体調を崩した患者の不安や緊張をくみ取り、安心感を与える対応ができるかが重要になります。言葉が通じない外国ではなおさらです。医療者とのスムーズなやり取りができる力も必要でしょう。

看護師ライター

桑野ナオさん

多職種と関わる医療通訳者は、医療者からの信頼を得るためにもコミュニケーション力は欠かせません。

洞察力

洞察力は「こういう情報があると助かるのではないか」「こういうことに不安を感じるのではないか」を観察し、感じ取る力です。言語化された情報だけでなく、話し手の表情や口調、声の大きさなどからも推し量れるものがありますよね。[14]

医療通訳者は、患者と医療者の会話だけでは不十分な情報を引き出せるように介入します。たとえば、患者の理解が十分でないと感じた場合、医療通訳者は患者の納得できる説明を医師から引き出します[15]

看護師ライター

桑野ナオさん

医療通訳は、会話を通して患者と医療者からの信頼関係を結ぶ手助けとなるでしょう。

冷静さ

医療の現場では、緊急性が高い場面や病名の告知など、深刻な場面に立ち会うこともあります。予期せぬ事態に遭遇しても、冷静に通訳できなければいけません。

たとえば、患者家族が動揺したり感情的になったりすることもあるでしょう。

看護師ライター

桑野ナオさん

プレッシャーを感じる場面があっても、その場の空気に飲まれずに、正確に通訳できる冷静さが医療通訳者には必要です[16]

責任感

医療通訳者には医療者の言葉を的確に伝える責任が伴います。医療分野は常に進歩しており、新しい知識や用語を学び続ける必要がありますよね。

看護師ライター

桑野ナオさん

医療通訳者も最新の医療知識を理解していなければ、誤訳や不正確な情報を伝えてしまう可能性があります。

医療現場では、通訳者の言葉が診断や治療に直接影響を与える場面も考えられるでしょう。医療者の言葉の重みを知り、その責任の一端を担っていると考えられる責任感が、医療通訳者には求められます[17]

医療現場での経験

医療通訳者も医療者であることを知れば、通訳の利用者も安心感を持ちやすくなります。医療現場での経験があれば「話を聞くポイント」「説明するポイント」を理解しやすく、コミュニケーションが円滑に進むのではないでしょうか。

医療現場での経験や病名や症状の知識があると、患者がどのような経過をたどるのかおおよそ予測して介入できます。もちろん、通訳者として「足さない、引かない」の原則は守らなけばなりません。

医療知識+経験は、状況理解に役立ちます

看護師ライター

桑野ナオさん

患者と家族の精神的なゆらぎなどさまざまなできごとに対し、冷静に対応できる基盤となるため、一般的な通訳者にはない強みとなります。

医療資格×語学を活かした医療通訳スキルで新たなキャリアにつなげよう

医療通訳は医療資格を活かした仕事ではめずらしく、リモートワークも選択できます。対面での仕事が多い医療職。

ワークライフバランスを重視したい方にとって、働く場所や時間を自身で調整できることは、大きなメリットといえるでしょう

医療者が医療通訳のスキルを持つことで、キャリアの選択肢が世界に広がります。医療通訳は病院やクリニックだけでなく、国際的な医療プロジェクトや医療ツーリズム、企業など、さまざまな場で需要があります。

看護師ライター

桑野ナオさん

医療通訳として、今までの医療の枠にとらわれない働き方にぜひ挑戦してみませんか。

医療通訳講座
「海外も英語も好きで勉強したけど、趣味で終わってしまう…」そんな医療者へ!未経験から医療通訳士になる流れ、医療英単語や実例集、講師との1on1を通した発声練習などから、具体的な働き方や実践方法を学びます。

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執筆

看護大学卒。看護師として、都内大学病院で16年勤務。脳外科ICU、脳外科・消化器外科病棟、地域連携に従事した。その間、体外受精にて子供を授かり、3姉妹の母となる。夫の海外赴任が新たな働き方を模索するきっかけとなり、Medi+「医療ライターのはじめかた」を受講。現在は派遣看護師としてデイサービスに勤務しながら、医療ライターとして活動開始。息抜きは家族とのお出かけ。