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エッセイストとして活躍中の薬剤師、ものすごい愛さん【後編】

今回は、明朗快活で前向きな発言、最愛の夫との仲良し生活を綴ったツイートで約10万人のフォロワーを持つエッセイスト、ものすごい愛さんにお話を聞いてきました。

今回のインタビューは【後編】になります!前編も気になる方は、以下からご覧ください♩

ものすごい愛さんの、現在の働き方

ーー現在の働き方と、1日のスケジュールを教えていただけますか?

今は、病院薬剤師とエッセイの仕事、あとはさっきお話ししたサポートの仕事のトリプルワークです。病院やサポートの仕事の合間に家事やったり原稿を書いたりしています。

朝ごはんやお弁当の準備があるので、フリーランスではありますが結構規則正しい生活を送っていると思います。

ただ、締め切りが重なって追い込まれると生活リズムは崩れて昼夜逆転することもあるので、そういうときは「家事は1ミリもできません!」と全てを投げ出しています。まあ、わりと自由に過ごしていると思いますね。

「エッセイスト」と「薬剤師」の両立

ーー薬剤師業務をしながら原稿を書くって、すごくハードなのではと思います。

そうですね。私、ものすごい愛として活動してることを外で言ってないんです。知っているのは、本当に仲の良い友達と夫だけ。親にも詳しくは話してなくて。

6年制の私大に進学して留年し、さらに国試浪人で半年間予備校に通って、かなりお金のかかるコースだったのに薬剤師の仕事に重きをおいていないので、母親に「あんなにお金がかかったのに! もったいない!」みたいなことは言われてました

ドラッグストアの薬剤師を辞めたとき、心配していた母親に「実は文章を書く仕事をしてるんだよね」とは言ったのですが、1冊目の著者で、母親が野グソする話を許可も取らずに書いちゃって。怒られるのがこわくて、せっかく書籍を出版したのに言えてないんですよね(笑)

文章を書く仕事をしていることは伝えていますが内容は内緒にしているので、母親はすごくエッチなBL小説書いてると思っているらしくて。都合がいいので「あーそんな感じ」って誤魔化してます(笑)

だから、どんなに忙しくても職場の休憩中や実家帰った時に原稿を書けないんですよね。

ーーなるほど。スキマ時間で原稿を書こうと思っても、やりにくい状況ですね。

そうなんですよね。
ものすごい愛が薬剤師であることは公表しているですけど、薬剤師業界の人にものすごい愛として活動していることはバレたくないんです

ドラッグストアを辞めたとき理由を聞かれたんですが、面倒くさくて、「アイドルを目指すんだ」とか「世界遺産を見て回るの」とか、ホラを吹きまくってました。最終的には「あいつは虚言癖で入院するんじゃないか……?」みたいな感じになってしまって。こういうことをよくやっちゃうんで、自分で自分の首をしめているな~って思いますね。

ーー「フリーランスで文章を書いています」って、最初は私も親に言いづらかったです。せっかく資格を取らせたのになんで臨床現場で働いてくれないの、安定した仕事をして欲しくて薬学部に行かせたのになんで違う道に行くの、みたいなことを言われるのがやっぱりすごくしんどかった時期がありましたね。

今は薬剤師さんとして働かれてるんですか。

ーーいいえ、私は正社員薬剤師や派遣薬剤師として働いたのち、フリーランスの医療・取材ライターとWebデザインをやり始めて。今は、医療・取材ライターやディレクション、ライター講師がメインで、薬剤師として臨床では働いていないです。

でもあれですよね。国家資格って保険というか、また働こうと思えば働けるお守りみたいなもんだと思います。

ーーすごく心の支えになっていますね。

本当にそうですね。
就活の時、当時付き合っていた夫に「結婚してくれるんだったら関西に行ってもいいよ」と言ったら、「じゃあ結婚するからおいでよ」って言われたんで、勢い任せで関西での就職を決めたんです。その時、周りからは心配されましたが「もしうまくいかなくても、帰ればいいしなぁ」と思ってました。

転職のしやすさは薬剤師の魅力のひとつかな、と。だから、わりと切羽詰まらず過ごせましたし、いろいろチャレンジできたなと思います

いまだに見る、「薬剤師国家試験に落ちる夢」について

私、いまだに不安になってたまに厚生労働省の薬剤師名簿に自分の名前があるか調べちゃうんですよね
「本当に受かったよね?」みたいな。たまに国試落ちる夢見ません?

ーー私は見ないですね(笑)。でも私もあと2点足りなくて、一度目の薬剤師国家試験に落ちてるんです。

私も現役で落ちたときは1点足りなかったんです。
二度目のときは自己採点で明らかに点数が届いてなくて、不適問題を入れても全然足りなくて。たぶんどこかでマークミスをしていて、それがうまい具合に点数に繋がって奇跡的に受かったんですけど、合格発表まで「落ちたな」と落ち込んで過ごしていたので、結構トラウマになってます。

私はあまりまともに大学に通ってなくて、いつも出席日数はギリギリでした。「あと1回休んだら留年だ」という自業自得のプレッシャーが7年間あったので、生活にストレスがあると、出席日数足りなくて留年する夢と国試落ちる夢を見ます。「あ~今、自分疲れてるな」っていう指標になってますね

ーー確かに、嫌なことで頭がうめつくされているのかもしれないですね。

そうですね、国家試験は人生で1番辛かったですね。
研究室の床に這いつくばって、「勉強したくない」って泣いてましたもん。

留年した後の学年では、仲の良い友達がみんな頭の良い人たちだったので、勉強を見てもらってました。スマホ取り上げられたり「俺が休憩していいって言うまで休憩なしで勉強しろ」と言われたり、当時は刑務所みたいな感覚でしたが今は感謝してます。

ものすごい愛さんが、今後やりたいこと

ーーものすごい愛さんが今後こんな活動していきたいな、チャレンジしたいなということはありますか?

薬剤師としては、販売や営業をやりたいなと思っています。
座って黙々とやる作業があんまり得意じゃないんです。人としゃべったり動き回るのが好きなので。

ドラッグストアで働いていた時は、販売業務がメインでした。お客さんに症状を聞いて「じゃあこのお薬ですね」「この薬は症状に合っていないので、こっちのほうがおすすめです」と提案をしてコミュニケーションを取れるのがすごく楽しくて。それがボーナスや給与、昇進に反映されることにやりがいも感じていました。

文章書くほうは、これまで結構やりたいことやらせてもらったというか。3冊目の本ですごく満足いくものができたんです。書きたいこと書けたなあと言う感覚があって、「もう一生本を出せなくてもいいや」というくらい満足しました。

今、そういった話はきてないんですけど、とてもいい経験になりましたしやっぱり自分の書いたものがかたちになるのはうれしいので、機会があればまたやらせてもらえたらいいなとは思います。

センシティブな内容も、人生のネタに昇華する

私最近、子宮外妊娠で右の卵管とったんですよね。こういう妊娠や婦人科系の内容ってやっぱりセンシティブじゃないですか

でも自分ではあまり気にしてないというか、「2個あるし、1個で済んだのは不幸中の幸いだったな」「とりあえず生きててよかったな」というくらいなんです。

あまりこういったことを明け透けに書いている人はいないので、そのうち全部書いてやろうと思ってます。痛い思いだけするのは癪ですし。

ーー私も昔「中等度以上の顔面麻痺」という病気になり記事を書いたのですが、同じ病気の方から反響がありました。興味ある方にとっては、中々ない嬉しい記事になりそうですね。

次回作は「ものすごい悪意?」

今まではポジティブな内容のものが多かったので、次はすごい下ネタとかムカついていることを書いてみたくて。ものすごい愛だとギャップがありますが、「ものすごい悪意」っていう名前ならセーフかなって

コロナ禍で全然行けてないですけど、もともと飲みに行くのがすごく好きなんです。飲みの席で聞いたたまたま居合わせた人の話とか、「ネットで書いたら絶対ドン引きされるだろう」みたいな話をいつか書けたら面白いだろうなと思っています。

ーー次回作も、楽しみにしてます。

ありがとうございます。こういうの書いてみたいな~とは思ってるんですけど、あまり能動的に動いてはいないですね。やったことないから、持ち込みとかしてみようかな。ただ、今の生活が気に入っているので、一番は平和に楽しく暮らしていきたいですね

自身のエッセイスト活動を通して思うこと

ーーものすごい愛さんが持ち込みをしたら、絶対通りそうだなあと思います。

いや、そんなことはないですよ。全然です、ほんとうに。やっぱりエッセイって、自分のマイナスの部分や過去のつらかった経験、今抱いている不満や怒りが題材になっているものが注目されている印象です。

同じような経験をしている人は共感できますし、それを乗り越えたり受け入れたりする過程が救いになりますしね

私は結構ちゃらんぽらんに生きてきたしあまり深く考えないほうなので、そういったものはなかなか書けません。エッセイも「毎日楽しいです」だけではなかなか難しい。なにより、語彙力や文章力が乏しくて力不足だなと日々感じています。もちろんお仕事をいただけたら嬉しいですけどね。

ーー実は、ものすごい愛さんが初めて書籍を出された2年前頃から読ませていただいてました。当時の私、すごく変な恋愛してたんですよ。

誰しも一度は変な恋愛しますよね……。

ーー当時すごく落ちてたときに、泣きながら読んだのがものすごい愛さんの1冊目の本だったんです。そういうエッセイを書く方の悩みや葛藤を聞けて、私自身もすごく勉強になりました。ありがとうございます。

ものすごい愛さんから、後輩の医療者へメッセージ

ーーこれから色んな挑戦をしようと考える、後輩薬剤師や医療従事者に向けて、何かメッセージをいただけますか。

私の周りにはずっと薬剤師として働いている人しかいないので、今回インタビューのお話をいただいたときに「薬剤師を経て違うことに挑戦したい」と思っている人って意外といるんだなってびっくりしました。

やりたいことがあるなら、絶対にやったほうがいいですよね。万が一うまくいかなかったとしても薬剤師に戻ることもできる。それが資格職の強みのひとつだと思いますし、努力してきた結果に得られた選択肢ですから。多くの薬剤師に大して思うのは、もっと外に目を向けたほうがいいよね、ということです。

特に、同じ環境で長く勤めている薬剤師は、どんなにつらくても「ここで働くしかない」と思い込んでいる人が多い印象があります。

金銭的にも時間的にも損をするのはもったいないなと思いますし、もしかしたら挑戦してみたいことが見つかるかもしれないので、あまり薬剤師と言う職業に縛られなくてもいいんじゃないかなぁ、と。

少し話は逸れますが、薬学部の実習生や就活生と話すと「お金のことについて聞くのって失礼なのかな」と思っているのが伝わってきます。「何にやりがいを感じますか?」とか「働いていて大変なことはなんですか?」という質問ばかりで、自分の人生を左右する大事なことなのに、あまりガツガツしたものを感じることが少ないんです。

私も昔はそうだったんですけど、そういう謙虚さってのちのち損をしちゃうことが多いなって。これは薬剤師の特性なのかもしれませんが、もっと自己主張して、強く生き抜く力をつけていくのも大事だと思います。

ーーありがとうございます。確かに、忙しくて職場と家の往復を続けるという働き方が多い印象はあるので、「色んな方向に目を受ける」というのは大事だなと思います。

そうですね、安くない学費で苦労して取った資格じゃないですか。存分に活かしたらいいと思います。一度きりの人生ですから、やりたいことがあるならドンドンやったほうがいいと思います。「自分にはこれしかできない」と決めつけてしまうのはもったいないですから。

ーーありがとうございました。

ものすごい愛さんのSNS

X(Twitter):こちら
Instagram:こちら
公式サイト:https://monosugoiai.com/

(インタビュアー/記事編集:松岡マイ、ライター:中川あや)

この記事の執筆者

薬剤師ライター:中川 あやさん

大阪薬科大学卒。地元の調剤薬局で薬剤師として従事する傍ら、ライターにも挑戦。
”いつでもどこでも働ける”を目指して自分の働き方を模索中。「読んだ後、その先の行動へつながる記事」を目指して執筆しています。

SNS(X):https://twitter.com/laugh_a_a
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執筆

京薬卒、(株)Medited代表取締役。 医療・取材ライターや医療系介護メディアの編集長業務、キャリアスクールでの講師メンター業などを経て2020年よりオンライン動画講座「医療ライターのはじめかた」メディア「MediJump」の運営を開始。2022年より医療×Webクリエイターの交流コミュニティ「MediWebラボ」をスタート。2023年に法人化し、経済産業省JStarX起業家プログラム等に採択。「医療資格は、ずっと味方」をテーマに活動しています。