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医療ライターがAIを使う前に知るべきリスクと安全な活用法

「AIを使えば、もっと効率よく記事が書けるのでは」

このように考えたことはありませんか?

AIは医療ライターにとって強力なサポート役になります。ただし、使い方を誤れば、意図せず情報の信頼性を損なうリスクも潜んでいます

2024年3月のGoogleコアアップデート以降、AIで安易に量産された記事の多くが「低品質」とみなされ、評価を落としています。もう、AIに書かせるだけで通用する時代ではありません。これからの医療ライターに求められるのは、文章を「書く」力ではなく、AIの出力を「検証する」力です

ライター

佐藤おさむさん

今回は、医療ライターが直面しやすいAIのリスクと、品質を担保して安全に活用するための考え方を解説します。

医療ライターの信用を落とす生成AIのリスク

医療ライターとして活動する中で、AIの使用について「みんな使っているから大丈夫だろう」と軽く考えていませんか。

医療ライターにとって情報の正確さは、命綱であり読者との信頼関係です。生成AIの特性を理解せずに使うことは、信頼を壊すことになりかねません。ここでは、避けて通れない2つのリスクを解説します。

【SEO評価低下】Googleが排除する「大量生成コンテンツ」

2024年3月、Googleは検索のルールを大きく変更し、「中身の薄い記事を大量に作って公開する行為」を厳しく排除するようになりました。[1]

これは、検索順位を上げるためだけに作られた、読者にとって価値のない記事を検索結果からなくすための対策です。

Googleが検索ユーザーに届けたいのは、AIが作った「既存情報のきれいなまとめ」ではありません。AIに丸投げした記事は、Googleから見れば「誰かの宿題を丸写ししただけの答え」に過ぎず、検索結果の上位に表示される価値はほとんどないのです。

[1] 注:Googleの公式ルール改訂によるもの。AIや人間といった「書いた手段」は問わず、「検索順位を上げる目的だけで、他のサイトの真似をしたような記事を大量に公開する行為」をルール違反(ペナルティ対象)と明言しています(出典:Google検索セントラル)。

【信用問題】架空のURLを捏造するハルシネーションの恐怖

医療ライターにとって恐ろしいAIの特性が「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」です。

AIは事実を「知っている」わけではありません。確率的に「次に来そうな単語」をつなげて回答をしているだけです。

そのため、構造上どうしてもハルシネーションが起きてしまいます。とくに厄介なのが、架空の論文や出典URLまでも自信満々に作り上げてしまう点です。

筆者が実際に経験したハルシネーションを3点紹介します。

  • 実在しない論文タイトルに、実在する著名な医師名を組み合わせる
  • PubMed IDまで発行するが、リンク先は無関係な物理学の論文
  • 薬剤の投与量を「mg」と「g」で間違える、禁忌薬を推奨する
ライター

佐藤おさむさん

文章は流暢で論理的に見えるため、斜め読みでは見抜けないことがあります。

ファクトチェックを怠り、誤った情報を納品してしまえば、クライアントのメディアの信頼を大きく損なうリスクがあります

最近(2026年2月時点)では、Web検索機能がついているため、完全に架空のURLを発行するリスクは激減しました。しかし、実在するURLに別の論文情報を混ぜて出力するケースがあるため、必ずリンク先を開いて確認する必要があります

初心者がやりがちな「AIへの丸投げ」が失敗する理由

AI導入の失敗例として多いのが、「まるっと一記事書いて」と丸投げする使い方です。AIに任せきりにすると品質が担保できない構造的な理由があります。

検索キーワード対策だけでは「E-E-A-T」が満たせない

医療・健康に関する情報は、Googleの評価基準でYMYL(Your Money or Your Life)に分類されます。人の健康や人生に直接影響するため、他ジャンルより厳格な審査が適用される領域です。

この領域で評価されるために必要なのがE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)。なかでも近年Googleが重視しているのが、最初の「E」であるExperience(経験)です

※E-E-A-TやYMYLの基本については下記の記事で詳しく解説しています。

AIは膨大な知識を持っていますが、物理的な身体も現場での経験もありません。「つらそうな患者さんの表情」「夜勤明けの病棟の空気」「医療機器を操作したときの手触り」などどれだけ流暢な文章を出力しても、Web上の情報を平均的に再構成したものに過ぎないのです。

臨床経験や取材に基づく一次情報が含まれていない記事は、医療領域において独自性がないと判断されてしまいます。

機密情報の入力は「情報漏洩」に直結する

初心者が気をつけたいのがセキュリティ意識です。

「取材で得た未発表データ」「患者さんの個人情報が含まれるメモ」「クライアントの内部資料」など、要約や構成案作成のためにChatGPTなどのAIツールにそのまま入力していませんか?

多くのAIサービス(とくに無料版やデフォルト設定)では、入力データがAIの再学習に利用される規約になっています。あなたが入力した機密情報がAIに取り込まれ、無関係な第三者への回答に出てくる可能性があるのです。

これは明確な情報漏洩であり、クライアントとの秘密保持契約(NDA)違反です。

ライター

佐藤おさむさん

「オプトアウト(学習させない設定)」をせずに機密情報を入力するのは、不特定多数が見る掲示板に貼り付けるのと同じくらい危険だと認識してください。

【コラム】「学習させない設定(オプトアウト)」の落とし穴とデメリット

機密情報を守るために「オプトアウト」は必須ですが、実務上知っておくべきデメリットと限界があります。

1. 履歴が残らなくなる

オプトアウト設定(とくにChatGPTの「一時チャット」など)を使用すると、「過去のチャット履歴が保存されない」「後から見返せない」というデメリットが発生する場合があります

「あのときの構成案をもう一度見たい」と思っても、ブラウザを閉じればデータは消滅します。重要な出力結果は、必ずその場でWordなどにコピー&ペーストして保存する習慣が必要です。

2. 主要AIツールの設定方法と注意点

各社とも「学習に使わない設定」を用意していますが、仕様は異なります。(2026年1月時点)

ChatGPT (OpenAI)

  • 個人版でも設定で学習をOFFにできます
  • 「一時チャット」モードでは履歴が残りません。

※法人向け(Team/Enterprise)はデフォルトで学習利用なし。

Gemini (Google)

  • アクティビティをOFFに設定可能
  • OFFにしても品質維持のため「最大72時間」保存される可能性があります。

Claude (Anthropic)

  • 設定で学習利用の可否を選択可能
  • 設定変更前のデータやすでに学習済みのモデルには影響しません

3. 「学習させない」≠「誰にも見られない」

最も注意すべき点は「学習に使わない設定=誰にも見られない」ではないということです。 多くのサービスでは、不正利用防止や安全性確認のために、「人間の担当者がチャット内容を目視レビューする権限」を持っています(※Gemini等の規約に明記)。

つまり、「オプトアウトしているから、患者さんのカルテ情報をそのまま貼り付けても大丈夫」という考えは間違いです。

ライター

佐藤おさむさん

個人情報や未公開データは、いかなる設定であっても入力してはいけません。

これからの医療ライターの生存戦略

AIは急速に進化していますが、「それっぽい嘘(ハルシネーション)」や「引用の取り違い」をゼロにできません。現実的なのは、AIの出力を下書きとして活用し、最後は必ず人が根拠確認と判断を行う運用です。

この考え方は「ヒューマン・イン・ザ・ループ(HITL|Human-in-the-Loop)」として整理されており、最初から完璧なAIを求めず、運用に“人の介在点”を設計して、実務で育てていくアプローチが提案されています。

役割の転換|「書く人」から「検証する人」へ

これからの医療ライターの価値は「ゼロから文章を紡ぐこと」から「AIが出力した情報の真偽を見極め、品質を保証すること」へ移ります。

具体的なイメージとしては、あなたは「執筆者」ではなく、優秀だが時々間違いを起こす部下(AI)を監督する「編集長」です。

【AIの役割】

  • 膨大なデータから構成案を作る
  • 論文を要約する
  • 初稿のたたき台を高速で作成する

【あなたの役割】

  • 出典元の論文(一次情報)と照合する
  • 医療的な文脈の誤りを正す
  • 独自の考察や体験談を加える
  • 最終的な責任を持つ

「書く」から「検証する」へ、時間の使い方をシフトする。この意識変革ができた人が、AIを武器にする「選ばれる医療ライター」へと進化できるでしょう。

ハルシネーションを防ぐ「検証プロンプト」の技術

AIに「正確に書いて」と祈っても、ハルシネーションは防げません。意図通りの回答を引き出すには、AIが嘘をつけないよう「出力の条件」をあらかじめ縛ることです。

根拠の特定ガイドライン名・発行年・該当箇所(章/節)を明記させる
捏造の排除架空の論文やURLは生成させず、不明な場合は「不明」と答えさせる
断定の回避医学的な不確実性(条件・例外・個人差)を残した表現を指定する
AIの出力条件の縛り方
ライター

佐藤おさむさん

出力プロセスに人間が介入し、ルールを運用に組み込むことが、これからAIを活用するうえで必要になるスキルです。

実践的なAIリスク回避と検証スキルを学ぶには

AIは、高性能なスポーツカーです。驚異的なスピードを出せる反面、無免許でハンドルを握れば大事故を起こしかねません。しかし、正しい運転技術さえ習得すれば、これほど心強い相棒はいないはずです。

たったひとつの誤情報で信頼を失わないために

一度のハルシネーションの見落としが、クライアントからの信用を失うリスクがあるなかで、

「Googleの検索アルゴリズムは予告なく変わる」

「著作権の法解釈は日々議論されている」

「AIモデル自体も数か月単位でアップデートされる」

これらをすべて一人で追いながら、日々の執筆と医療情報の検証を両立するのは、現実的ではありません。

リスクを一人で背負う必要はない

医療×Webの専門コミュニティ「MediWebラボ」には、現役の医療ライターが実践しているリスク回避法や、安全な記事制作のコツが蓄積されています

「自分のAIの使い方は安全なのか?」そんな不安を、経験者に直接相談できる環境があります。

ライター

佐藤おさむさん

一人で悩む時間は終わりにして、コミュニティの集合知を味方につけ、安全にAIを使いこなす側に回りましょう。

まとめ

AIは何でもできる「魔法」ではありません。使い方を誤れば、SEO評価の低下や信用を失うリスクがあります。一方で、正しく理解し、人間が検証するプロセスを確立できれば、これほど頼もしい道具はありません。

これからの医療ライターに求められるのは、AIを盲信することではなく、プロとして疑い、検証し、責任を持つ「監督者」としてのスキルです。

ライター

佐藤おさむさん

数か月単位で進化する今、一人ですべの情報を追い続けるのは現実的ではありません。

ぜひMediWebラボで最新のノウハウを共有し合い、安全に次のステージへ進みましょう。

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執筆

地域基幹病院や健診センターなど、多様な医療現場での勤務経験を持つ。 現在も医療機関での勤務を続けながら、院内外向けの広報・情報発信、患者向け資料作成などにも携わり、医療分野に特化したライターとして活動中。クリニックや企業サイトのコンテンツ制作、医師・医療機器開発者へのインタビュー記事執筆などを幅広く手がけている。第2回「Medi+薬機法実践力向上講座」卒業生。