今回は、昨年(2021年)11月に株式会社asaiを起業。生理を可視化できるウェアラブルデバイス(身体の一部に装着できるコンピューターデバイス)開発中の浅井しなのさんにお話をうかがいました。
薬科大学を卒業後、起業の道に進んだ浅井さん。起業に至るまでのきっかけや思い、悩み、将来の展望などたくさんの内容を聞かせていただきました。
今回のインタビューは、動画としてもまとめています。気になる方は、YouTube動画もぜひご覧ください♪
浅井しなのさんの自己紹介
ーー本日はお時間ありがとうございます。自己紹介をお願いします。
浅井しなのといいます。現在23歳です。
東京薬科大学の生命科学部を2021年に卒業し、同じ年の11月に(株)asaiを立ち上げ、今は事業の準備をしています。
高校生の頃から生物系のことが好きでした。突き詰めて何かやりたいと思うことはなかったのですが、幅広く学べる生命科学がいいなと思い受験をしました。
大学で学んだ内容は、現在の活動にもつながっています。
私の事業の内容では生物的な知識や科学的な知識が必要なので、何も知らないで研究者の方とお会いするより、ある程度仕組みを知ってお話しができます。なので、学んだ知識はスムーズなコミュニケーションの基盤となっていますね。
新卒起業、生理を可視化するウェアラブルデバイス開発を目指すまで
ーー浅井さんが起業にいたるまでの、経緯や思いを教えてください。
私自身、生理に関する悩みがとても多くありました。
意識が飛ぶほどの生理痛だったり、婦人科の先生に生理痛ごときで来るなと追い出されたり、インターン中は常にトップだった営業成績が、生理期間中だけパフォーマンスが落ちてしまったり。
自分の経験から生理に関する怒りを感じ、解決できるものはないかと探したところフェムテック(Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を合わせた造語)という領域が見つかりました。
しかし、今のフェムテックではまだ私の悩みを解決できないなと思い、生理の悩みを解決できるような事業を立ち上げようと起業しました。
「reanne(リアンネ)」と、事業内容について
ーーTikTokやTwitter(X) では「reanne(リアンネ)」という名前をお見かけします。そちらに込められた思いもぜひ教えてください。
reanneは、サービスの名前です。今から60年前日本で初めて生理用ナプキン”アンネナプキン”が発売されたことにちなんでいます。アンネナプキンが発売されるまでは、脱脂綿をゴムで引き詰めて経血を防いましたが、アンネナプキンが誕生し女性にとっての革命となりました。
しかし、60年後の現在の生理用品はそこから全然進化していません。アンネナプキンが11月11日に発売されていたので、ちょうど60年後の2021年の11月11日に会社を立ち上げ、第二次生理革命を起こそうという思いで”re”anneと名づけました。
ーー事業内容について、教えていただけますか。
生理は、他人と比べることが難しく異常に気づかないことが課題であると思っています。そこで、”自分の生理の状態を可視化できる生理ナプキン”のようなウェアラブルデバイス(身体の一部に装着できるコンピューターデバイス)を開発しようと考えています。
実際、TikTokに「こういう症状は異常です」と投稿すると、約2000件ものコメントが届きました。「これって病気かもしれないの?」「すぐ病院に行ってきます」というコメントが届き、生理の異常に気づけない人は一定数いるんだな、と思いました。
ビジネスコンテストで優秀賞に至るまで
ーービジネスコンテストで優秀賞も受賞されましたが、そこに至るまで努力したことや印象に残っていることはありましたか?
とにかく、自分の思いや考えをたくさんの人に話しました。
自分は何がやりたいのか、どういう風に人に伝えればうまく伝わるのか、何回もたくさんの人に話して明確にした感じですね。
最初起業したときは、漢方の入ったお菓子を作ろう、生理用品を無料配布しようなど、いろいろな事業を考えていました。アイディアを1つずつ検証し、「これだ!」と思える事業に行き着きました。とにかくアウトプットしていくことを意識していました。
人と話すことは大事だと思うので、似た志をもつ人が集まるコミュニティに入ることは大切だと思います。
でも、コミュニティに入っているからといって安心感を得てしまうと少し危険かなとも思います。バランスも重要ですね。
ターニングポントは、コロナ禍でできた空白の半年間
ーー浅井さんにとっての今まで人生を考えたきっかけやターニングポイントはどんなことだったんでしょうか。
半年間ほどコロナ禍で就職活動がストップしたことは、起業する1番のきっかけでした。
友達と会う機会がなく、1人で考える時間が多かったため、自分のやりたいことって本当は何だろうと見つめ直す期間になりました。
自分はどんなことに怒りを感じているのか考えた時に、インターンでの経験や生理痛など生理に関する怒りが多くあったため、なんとかしたいと思って起業を決めました。
「起業はリスクじゃない」という軸
私は、「起業ってリスクじゃない」と思っています。
もし失敗したとしても、その経験自体は価値があるもの。そこからいくらでもやり直せると思い2020年の11月に起業を決意しました。
コロナ禍でできた空白の半年間がなかったら、周りと同じように就職していたと思います。半年間自分の考えを見つめ直し、自分のやりたいことが分かりました。一人の時間がたくさんできたという面では、コロナに感謝しています。
失敗も通して、常に自分と向き合う大切さ
ーー今まで人生で辛かったことや失敗したことがあれば教えてください。
事業を作っていくうえでのメンバー集めなどは難しかったです。起業を決意してから、ずっと自分と向き合っている感じがしています。1つの意思決定にも覚悟が必要なので、その都度自分と向き合っています。
1人で考え込むことは苦手なので、人に話しまくっていますね。「今こんな感じでこんなことに悩んでいる」と話していくうちに、自分の中で整理されていきます。
アドバイスをもらう時に「これは私もそう思うなぁ」「これはちょっと違うなぁ」と話しながら自分の中でまとめていくことも、いいかもしれません。
あとは、「起業する」と決めた時から左耳の調子が悪いですね……。毎日事業のことを考えていて、中々休む時間がないのですが、休息も大切ですね。
浅井さんの現在の活動
ーー現在の働き方を教えていただきたいです。
今は、3つのインターンと起業支援施設で働いています。
事業の準備を進めつつ、企業支援施設でアルバイト、自分の事業に関連するような会社でインターンもしています。インターンもアルバイトも自分の会社に必要なものを学ぶために働いているので、すべてが事業の準備につながっていますね。
起業支援施設では、幅広い範囲で起業について学んだり、起業支援のコミュニティに参加してコミュニティづくりを学んだりしています。
インターン先は、SNSの運用や創業時の資金調達の支援をしている会社など。いずれ自分もSNSの運用や資金調達もしていくと思うので、今のうちに経験をして自分の事業にも活かしていこうと思いながら活動しています。
ーー時間配分やスケジュールはどのような配分なのでしょうか。
週に何日休むかも決めてなくて、土日関係なしに自分の会社のことをずっと考えています。
午前中の頭が回る時間は、自分の会社のことに集中していることが多いです。
その後、午後にインターンの業務をしたり、アルバイトのことをやったりと、ざっくりと時間配分をしています。
基本的には自分の会社のことをして、気分転換のような形でインターンやインプットに時間を費やしています。
新卒起業、奮闘する浅井さんのこれから
ーー浅井さんが、今後挑戦したいことを教えてください。
現在作ろうとしているウェアラブルデバイスは、もともと研究機関と共同開発が必須で、個人だと取り引きが難しい状況でした。法人化しなければ継続できない状況だったので、商品が完成する前に事業化に進んだという過程があります。
なので、まずは会社の事業である生理の状態を可視化できる生理用品”reanne”開発を目指しています。まだまだ始まったばかりの段階ですが、なんとか実現させたいです。
起業を目指す人へのメッセージ
ーー今後起業を目指す方に向けて、メッセージをお願いします。
私は、起業や自分のやりたいことに挑戦することは、ノーリスクだと思っています。得た知識や経験は絶対生かせるものになると思うので、挑戦してみたいと思ったことは小さなことでもぜひ挑戦していただきたいです!
ーーありがとうございました。
X(Twitter):https://twitter.com/asai_47
TikTok:http://tiktok.com/@reanne_period
ビジネスコンテスト:https://tokyo-startup.jp/winning2021
今回のインタビューは、動画としてもまとめています。気になる方は、YouTube動画もぜひご覧ください♪
(記事編集:松岡マイ、インタビュアー/ライター:中川あや)
薬剤師ライター:中川 あやさん
大阪薬科大学卒。地元の調剤薬局で薬剤師として従事する傍ら、ライターにも挑戦。
”いつでもどこでも働ける”を目指して自分の働き方を模索中。「読んだ後、その先の行動へつながる記事」を目指して執筆しています。
SNS(X):https://twitter.com/laugh_a_a
あやさんも参加中!医療×Webクリエイターコミュニティ「MediWebラボ」とは?