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作業療法士から、等身大の生き方を目指すイラストレーターへ転向!爽あゆみさん

今回は、作業療法士からイラストレーターに転身し、Webメディアや雑誌の挿絵の提供や、NFTでの作品販売、イラスト素材販売など多方面で活動中の爽あゆみさんにお話を伺いました。

作業療法士からイラストレーターになられた経緯、その後の働き方、コンセプト「等身大の生き方を目指す現代女性」に対する想いなどたくさんお話していただきました。

爽 あゆみさんの自己紹介

写真提供:爽 あゆみさん

ーーさっそくですが、簡単な自己紹介を伺ってもよろしいでしょうか。

北海道の大学を卒業後、作業療法士として病院や訪問事業に携わってきました。

患者様の生活支援を重ねるうちに「自分らしく、心地よい働き方」を模索するようになり、イラストレーターの活動をスタート

主にwebメディアや雑誌の挿絵として、美容・ヘルスケア系のイラストを提供しています。他、NFTでの作品販売、イラスト素材販売など多方面で活動中です。

オリジナルイラストは「等身大の生き方を目指す現代女性」をテーマとしており、どこか生活感や懐かしさを感じるタッチを意識しています。現在は、自己表現の機会を増やすために作家活動も勢力的に行っています。

オフラインでは就労支援事業や接客業にも従事しており、相互に良い影響を与え合うようなワークスタイルを追求中です

イラスト活動をはじめたきっかけは、日々の小さな積み重ねだった

写真提供:爽 あゆみさん

ーーイラスト活動をはじめたきっかけは、どのようなことだったのですか?

小さなきっかけはたくさんありますね。友人にウェルカムボードを作ったり、似顔絵を送ったり……。

でも、作業療法士として、患者さんの価値観や人生観と向き合ううちに「自分はどうしたいのかを日々考えるようになったこと」が小さなきっかけを繋げる基盤になっていたんだと思います。

作業療法士は、患者さんの体を治すだけではなく、本人が満足できたか、本人らしい人生や生活の提供ができたかを指標に判断しています。患者本人の価値観や人生観を大切にしながら、支援することが特徴です。

そうやって患者さんと向き合ううちに、もし私がおばあちゃんになってから「好きなことはなんですか」「大事にしてきたものはなんですか」と聞かれても、すぐに答えられないなと気がついたんですよね。そして、自分が大事にしたい存在、やりたいこと、自分に合った働き方を考えるようになりました。

そんな状況の中で「手の届く範囲の人たちを幸せにできる存在でありたい」「そのためには自分には余裕が必要だな」という考えに至りました。医療現場はエネルギー消耗も激しいので、気持ちに余裕を作れなくて。だから元々好きだったイラストを仕事にする決意をしたんです

イラスト活動のはじめ方と学び方

写真提供:爽 あゆみさん

ーー現在マイナビさんやnonnoさんなど、有名なメディアでイラストを描かれている爽さんですが、どのようにして活動を広げたのでしょうか。

まずは自分の絵を人に見てもらうために、複数のSNSでアカウントを作り、自分に合ったものを探しながら、毎日イラストを投稿し続けていました。SNS上で人とのつながりを増やしつつ、泥臭く営業活動もしていましたね。

理想からの逆算で、ポートフォリオを作る

ーーまずは自分の描けるイラストをアピールできる媒体を作ってから、営業をかけて案件獲得するという流れだったのでしょうか。

そうですね。自分の描きたい絵と相性のいい媒体を分析してから、ロールモデルを決め、その方を真似たポートフォリオを作りました

ロールモデルと決めた方がお仕事している企業が出している本を見て、どんな絵が使われているのか研究してから、描く絵を決めてポートフォリオに載せていましたね。

実績ゼロからの、イラストスキルの伸ばし方

ーー絵の描き方はどうやって学ばれたのでしょうか。

昔から絵を描くことは好きだったのですが、人から学んだ経験はなく、完全に独学でした。イラスト活動をはじめた頃は、SNSに毎日絵を投稿して、自分の絵に足りないところを見つけて次に活かすことを繰り返していました。

好きなイラストレーターさんと自分の絵を比較して、模写をしながら線の特徴を掴んだり、着色技法を採り入れたりしていました。描くことと学ぶことは同時並行で行っていましたね。

私の場合、キャリアスクールで、すでにイラストレーターとして活動している方に自分の絵を見てもらい「これでやっていけるよ」と客観的に判断してもらえたことが大きかったと思います。

ーー現状のレベルで活動できるのか不安な方は、プロで活動されている方に一度自分の作品とかを見てもらって、足りないものを知るところからはじめるのが良いということでしょうか。

そうですね。そのためにもまずは自分の絵を世に出すことが大事だと思います。自分がもし下手だと思っていても、人から見たら需要があるかもしれないので。

ーーちなみに、現在はどのようなイラスト作成ツールを使用されていますか?

最初はCLIP STUDIOを使用していましたが、procreateのソフトの存在を知ってからはずっとprocreateで描いていますね。加工やテキストの追加など、デザイン系の作業をするときは、Adobe Illustratorに持ち越しています。

人と比べてしまうことが辛かった、イラスト活動初期について

写真提供:爽 あゆみさん

ーーイラストレーターになられて辛かったことはありますか?

とにかく、人と比べて焦ってしまうことが辛かったですね

とくにイラスト活動をはじめた1年目は、それが顕著でした。絵の仕事も安定せず、自分が思い描く理想に到達していない焦りから、いろいろな人と比べてしまっていました。

SNSでよく見かけるイラストレーターさんやフリーランスの方と比べることもあれば、正社員として昇進して結婚して子どもを授かっている周りの人たちの生き方と比べることもありました。

イラストの仕事でPDCAを回していくときにも、自分の感情が邪魔することが多かったです。分析しても結局「自分が悪いんだ」と思い込んで停滞していた時期が、1年ちょっとありましたね

ーー人と比べてしまう自分から、どう考え方を変えて乗り越えたのでしょうか。

いろいろな人に相談して客観的な意見をもらうことと、考える隙間を無くすように作業に集中することで、焦っていた時期を乗り越えました

周りに「あなたはどの問題においても感情に振り回されているよ」と客観的に言われたときに、はっとさせられました。

自分の活動内容や目標を隠さずに伝えてみると、案外みんな応援してくれたり、好意的な意見をもらえたので、自分が周りに抱いていた嫌な感情は幻想だったと気づくことができました。

あとは、とにかく集中して絵を描き続けられるように、作業配分やデスク環境を整えて、余計なことを考える隙間を無くしたことも効果的でした。

爽 あゆみさんの現在の働き方

ーー爽さんの、現在の働き方を教えてください。

週4日、就労継続支援事業所の指導員をしており、夜や残りの週3日でイラストの仕事をしています。余裕がある時は、接客のアルバイトをして息抜きをしています。

ーー就労継続支援施設では、どのようなお仕事をされているのですか

障害を持っている方々を就労につなげるサポートをしています。私が勤めている事業所では、イラストやデザインを指導しています。

就職のサポートだけではなく、日中活動するための体力づくりや、作業に楽しんで取り組んでもらう場の提供などを行っています。利用者の多くが自分の作品に自信がないので、良いところをたくさん伝えて、安心して書いてもらえるように意識しています。

利用者のモチベーションや、スキルに合った難易度の課題をチームで考えることも特徴的です。たとえば、利用者のやりたい作業が明確にあったとしても、チームでその方のスキルや体調変化を考慮して、失敗体験にならないような課題を選定しています。

また、会社で受注する案件の一部を担当していただくこともあります。世に出すお仕事の一部を手伝ってもらうことで、社会に貢献している感覚を得られたり、自信に繋げていただけたりするような課題提供の工夫も行っています。

ーー作業療法士として、患者の価値観と向き合ってきた経験を生かしているのですね。

そうですね。障害を持っている方々の支援をする場面では、作業療法的な視点を生かせます。イラストのスキルも活かすことできるので、自分の能力を存分に発揮できていると感じています。

爽 あゆみさんの1日のスケジュール

写真提供:爽 あゆみさん

ーー具体的に、どのようなスケジュールで1日を過ごしていますか。

就労支援のお仕事は10時から16時でやっていまして、休憩時間が途中1時間あるんですよね。休憩中にイラストの仕事のメールに返信したり、締め切りが迫っているものを描いたりしています。

退勤して16時半頃から18時頃までは図書館で作業することが多く、帰ってご飯を食べてお風呂に入った後、大体21時から25時ぐらいの間はテレビやSNSを見たりしながら絵を描いています。なので、1日あたり3時間ぐらいは絵を描いているのかな

予定が入らない限りお休みは作っていないのですが、おうちでのんびりしながら気ままにイラストを描くのも嫌いじゃないので、今はこの生活で続けてみようと思っています。

コンセプト「等身大の生き方を目指す現代女性」に込めた想い

写真提供:爽 あゆみさん

ーー「等身大の生き方を目指す現代女性」をコンセプトに掲げたきっかけはなんですか。

最近は、好きなことをして生きていくとか、個性や自分を大事にした生き方とか、キラキラした言葉がとても流行っているじゃないですか。

ただ私の人生の大半は、世間一般が思い浮かべるいわゆる普通な生き方をして、普通の価値観の中で生きていることの方が多かったんですね。

だからこそ、今のような働き方に変えたとき、人と比べて落ち込んでしまって。今もそんな自分から完全に切り替えられたわけではありません。

今までの自分の生き方を否定したくなかったという想いを「等身大の生き方を目指す女性」というテーマに込めています

今の自分と理想の自分を行ったり来たりしながら、強くあろうと頑張る姿って魅力的だしとても人間らしいと思うんですよ。そんな女性を表現したかったんですよね。等身大な方を応援したいし、そうやって過ごす自分自身のことも応援したいとも思うんです。

なのでオリジナルで書いている絵は、女の子たちの日常や生活感あふれる描写だったり、現実から逃げたくなっているような妄想チックな瞬間を切り取ったり。葛藤を表現するような表情や仕草を描写しています。

新しい価値観のアップデートに戸惑ったり、揺れ動いたりしている人たちにとって、生きる活力になるような、安心できるような作品になったらいいなと思っています。

今後挑戦したいこと

ーー爽さんが、今後挑戦してみたいことはありますか。

今は商業的なイラストを描くことが多いのですが、今後は自己表現できるイラストにも注力していきたいです。個展の開催や、グッズ販売などアート活動もしてみたいと考えています。

また、音楽アーティストさんのジャケットを描くことにも挑戦してみたいです。他の人の作品の世界観を、自分の解釈で表現するお仕事にも興味があります。

ーーNFTアートの販売もはじめたとのことですが、それも自己表現の一貫としてでしょうか。

そうですね。NFTの「交換の利かないデジタルアート」という性質上、自分の作品の価値を保証してもらいながら、人の手に渡ることが魅力的だと思っています。

NFTは、自分が描きたい絵を描く場として楽しんでやっています。絵を嫌いになりそうな時もやっぱりあるので、描きたい絵を描く時間を取る工夫も必要だと感じています

これからは、表現のための絵も極めていきたいです。

※NFTアート:NFT(非代替性トークン)と紐づけられたデジタルアートのこと。

後進の薬剤師や医療従事者に向けてメッセージ

ーー今後爽さんのように、病院で働いていたけど自分も好きなことを仕事にしてみたい医療従事者に向けて、何かメッセージをお願いします。

もし医療系のお仕事を誇りに思っていて、ポジティブな気持ちがとても大きいなら、私はその仕事の中で好きなことややりたいことを探すのが一番の近道だと思います。医療分野といっても、専門領域や職場が変われば働きやすさも変わるし、自分に合った要素を突き詰めていくことが大事だと思うからです。

ただ、もし今の働き方への違和感がいつまで経っても消えなかったり、仕事をしていてもネガティブな精神状態が続くのであれば、職種や勤務形態を変えてみても良いのかもしれません。そのためには、まず自分をよく知ることが大事です。

私の場合、自己分析を深めたからこそ心地よい働き方につながりました。たくさん試行錯誤したからこそ、理想的なライフワークバランスに近づいてきているように思います。

まずは心のゆとりを作るために、休日やおうち時間の過ごし方を整えるところからはじめてみて、自分と向き合う時間を作ってみることをお勧めします。

ーーたくさんお話を聞かせてくださり、ありがとうございました!

爽 あゆみさんのSNS
この記事の執筆者

薬学生ライター:えみぞうさん

都内薬学部薬学科4年。大学を1年休学して日本各地を飛び回る。5歳から17年続けているダンスを強みに、旅先で出会った人とダンスでコミュニケーション。旅するダンサーえみぞうとして活動中。人と話すことと深く考えることが好き。「読んだ人の心を動かす記事」を目指して執筆しています。

Twitterhttps://twitter.com/amy_amy_twi
Instagramhttps://www.instagram.com/tabi_amy_dancer_/

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執筆

京薬卒、(株)Medited代表取締役。 医療・取材ライターや医療系介護メディアの編集長業務、キャリアスクールでの講師メンター業などを経て2020年よりオンライン動画講座「医療ライターのはじめかた」メディア「MediJump」の運営を開始。2022年より医療×Webクリエイターの交流コミュニティ「MediWebラボ」をスタート。2023年に法人化し、経済産業省JStarX起業家プログラム等に採択。「医療資格は、ずっと味方」をテーマに活動しています。