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臨床検査技師×動画クリエイター、好きを仕事につなげたアシュさん

今回は、臨床検査技師&副業動画クリエイター、「MediWebラボ」メンバーのアシュさんにお話を伺いました。

動画クリエイターをはじめられた経緯、動画制作活動のはじめ方と学び方、今後挑戦したいことなどたくさんお話していただきました!

アシュさんの自己紹介

ーーさっそくですが、簡単な自己紹介を伺ってもよろしいでしょうか。

臨床検査技師※をしながら動画制作の副業をしています、アシュと言います。よろしくお願いします!

※臨床検査技師とは:医師又は歯科医師の指示のもと、臨床検査とよばれる検査を行う職業。臨床検査には、患者の体から血液、尿、組織の一部などを取り出して行う「検体検査」と、体の表面や内部を検査する「生体検査」の2種類があります。

臨床検査技師歴が10年、動画制作歴は1年半です。正社員として臨床検査技師をしながら、月8日ほどの休日と平日夜の時間を使って動画制作を行っています。動画制作では、主にキャラクターアニメーションを作成しています。

人生を考えたきっかけは「20年後に臨床検査技師の仕事がなくなる確率90%」

ーー動画クリエイターをはじめたきっかけは、どのようなことだったのですか?

臨床検査技師の仕事を続けることに、危機感をおぼえたことがきっかけです。たまたま「大学病院の調査によると、20年後に臨床検査技師の仕事がなくなる確率が約90%」と書いてある記事を見つけて「このままではまずい」と思いました。

実際に、検体検査の機械化が進んでいるため、人の手がほとんど必要なくなってきています。検査内容によっては、すでに機械に検体を乗せて操作ボタンを押すだけの仕事になっていて。もはや検体を運ぶ動作までも、機械で自動化されている医療センターもあるみたいです。

臨床検査技師以外にもなにか新しいスキルを身につけなければならないと思い、パソコンひとつで働けるWeb関係の副業を探しました。私はアニメがとても好きで、動画制作の仕事も流行っていたので、アニメーション制作に興味を持ちました

動画制作活動のはじめ方と学び方

ーー未経験から、どのようにして動画制作を学ばれたのでしょうか。

動画制作会社で20年ほど働かれていた方から、直接学びました。

まず、ディズニー映画でよく使用されている「アニメーションの12原則*」を覚えて、動きのパターンを掴みます。そしてYouTubeでアニメーション動画をスロー再生して、細かなモーションのかけ方を見て学んでいました。キャラクターの動きをよく見て「この辺りで一旦後ろに引いたんだな」と観察していましたね。

アニメーションの12原則*:『ディズニーアニメーション 生命を吹き込む 魔法 ― The Illusion of Life ―』著 フランク・トーマス/オーリー・ジョンストンの「第3章 アニメーションの原則」に記載されている、アニメーション制作の基本原則。

① Squash and Stretch (潰しと伸ばし)
② Anticipation (予備動作)
③ Staging (演出)
④ Straight Ahead Action and Pose-to-Pose Action(逐次描きと原画による設計)
⑤ Follow Through and Overlapping Action (あと追いの工夫)
⑥ Slow In and Slow Out (両端詰め)
⑦ Arcs (運動曲線)
⑧ Secondary Action (副次アクション)
⑨ Timing (タイミング)
⑩ Exaggeration (誇張)
⑪ Solid Drawing (実質感のある絵)
⑫ Appeal (アピール)

ーー案件はどのようにして取っていかれたのですか?

私は、クラウドソーシングサイトやランサーズを使っています。最近は動画制作をそれなりにできる人はだいぶ多いので、レッドオーシャンになっていて案件は取りにくい状況ですね。

なので最初は、あまり人気がなさそうな案件を狙って応募していました。単価が低い案件や、納期が短い案件に応募して、まずは実績を作りました

未経験から動画制作をはじめて、失敗したこと

画像提供:アシュさん

ーー未経験から動画制作をはじめて、辛かったことはありますか?

動画制作の案件は、クライアントに成果物を一度提出したら必ずと言っていいほど修正が返ってきます。1度提出して終わりではない。修正して再度提出するまでを、納期までに終わらせる必要があると、動画制作業界に入ってから知りました。

私は最初、「納期までに一度提出できればいいんだ」と思っていたので、修正作業が納期に間に合わずクライアントにご迷惑をおかけしたこともありました。

ーー動画制作ですと、テキストだけでは事前にイメージを伝えることが難しいので、修正が必ず入るのかもしれませんね。

そうですね。「これで完璧だ」と思ってから提出してしまうと、修正のコメントが返ってきたときに、どこを修正すべきか焦ってしまいます。ですので、修正が返ってくることを踏まえて、早めに成果物をクライアントに提出するよう心がけています

また、あらかじめ作業時間の取れると分かるタイミングで仕事を受けて、納期に間に合うようスケジュールを組んでいますね。本業が忙しくない時期に動画制作を行っているため、継続案件ではなく単発で受注しています。

アシュさんの現在の働きかた

ーーアシュさんの、現在の働きかたを教えてください。

臨床検査技師の仕事を平日8時半から17時まで行い、家に帰って家事をして、20時くらいから動画制作の作業をはじめています。

深夜の12時から1時くらいに眠気がきて寝落ちしてしまい、朝の3時に起きてまた作業をはじめることも。朝7時くらいまで作業を続けて、そのまま朝8時半から臨床検査技師の仕事に戻ります。

ーーとても忙しく過ごされていますね……!本業がありつつ副業を行えるのは、どうしてなのでしょうか。

副業の時間を「仕事だ」とあまり気負わないようにしています。趣味としてやっている感覚に近くて、自分の好きなことの延長線として動画制作を行っています。今は6時間くらいは眠れていますよ。

ーー好きなことだからこそ、続けたいと思われているんですね。お体を大切にお過ごしください……!

写真提供:アシュさん/実際の作業画面

今後挑戦したいこと

ーーアシュさんが、今後挑戦してみたいことはありますか。

動画制作スキルを磨くだけでなく、さまざまなスキルを掛け合わせることで仕事の幅を広げたいと思っています

マーケティング×動画制作

動画制作のスキルに加えて、マーケティングにも今後力を入れていきたいです。アニメーション動画って、広告に使われることが多いんですね。なので、どういう経路を辿ったら視聴者に広告動画を見てもらえるか、動画の内容をどう企画して、どんな構成で作れば宣伝できるか考える必要があります。

動画制作のスキルだけでなくマーケティングの視点も必要だと、ここ1年半働いてみて感じました。いくら頑張っても何10年も動画制作の仕事を本業にされている方に技術力で勝つことはできません。動画のクオリティーで競うのではなく、スキルを掛け合わせることで自分の希少価値を高めていきたいです

臨床検査技師×動画制作

ーー臨床検査技師と動画制作のスキルを掛け合わせることも、考えていらっしゃるのでしょうか。

はい、考えています。医療現場でもアニメーション動画が用いられている場面はすでにあります。たとえば、現在働いている病院は「トレッドミル検査」という検査の説明のために動画を患者さんに見せているんですね。

トレッドミル検査とは、運動すると心臓が苦しくなる症状が見られる患者に使う検査で、ベルトコンベアに乗って走り続けて、運動中の心臓の状態を調べます。時間が経つとともに、傾斜と速さが上がっていく、とても体力のいる検査です。検査の内容を言葉だけでは伝えにくいので、動画を患者さんに見せてイメージを伝えています

画像提供:アシュさん/トレッドミル検査動画の1コマ

他にも、待合室でスライドショーの動画を流している病院もありますよね。おじいちゃん、おばあちゃんにも伝わりやすいよう簡単なアニメーションで十分なので、複雑なスキルを持っていなくても作ることができます。

動画制作スキルと、医療従事者の専門知識を掛け合わせたお仕事のニーズはあると思います。おそらく医療従事者の方々は、クラウドソーシングサイトでお仕事を受注する機会がなかなかないので、自らアプローチして提案営業をしたら、仕事として案件を作っていけるのではないかと思います。

過去に、携帯心電計の商材をモチーフにしたアニメーション動画を作ったことがありました。携帯心電計は、心電図で見つけられる疾患の中でも脈が乱れる疾患に有用で、胸が苦しい症状だけの患者には適さないんですね。脈が飛んでしんどいとか、めまい、ふらつき、動悸がある患者に向けた商品です。適用する患者の特徴や、商品のアプローチの仕方など、マニアックな内容を作ることが好きなんです。

医療職だからこそ、検査内容にも詳しいですし、広告規制を踏まえた提案もできます。自分の持っているスキルをうまく掛け合わせられたら嬉しいです

ーー医療職の強みを生かして特化できたら、仕事の幅も広がりそうですね!

後進の薬剤師や医療従事者に向けてメッセージ

ーー今後アシュさんのように、何か新しいことに挑戦したい医療従事者に向けて、何かメッセージをお願いします。

医療職以外でやりたいことがある方は、是非まずはやってみるよう心がけていただきたいです。一歩を踏み出さないと、0から1には決してなりません。

私も実は、パソコン操作が苦手でした。でもクリエイティブやアニメが好きなので、未だにチャレンジし続けている状態です。形になるかどうかは別として、まずは「好きなことを1回やってみよう」という気持ちで踏み出して欲しいと思います

ーーたくさんお話を聞かせてくださり、ありがとうございました!

アシュさんのSNS

Twitterhttps://twitter.com/ash_FK_238
アシュさんも参加中、医療×Webクリエイター交流コミュニティ「MediWebラボ

この記事の執筆者

薬学生ライター:えみぞうさん

都内薬学部薬学科4年。大学を1年休学して日本各地を飛び回る。5歳から17年続けているダンスを強みに、旅先で出会った人とダンスでコミュニケーション。旅するダンサーえみぞうとして活動中。人と話すことと深く考えることが好き。「読んだ人の心を動かす記事」を目指して執筆しています。

Twitterhttps://twitter.com/amy_amy_twi
Instagramhttps://www.instagram.com/tabi_amy_dancer_/

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執筆

京薬卒、(株)Medited代表取締役。 医療・取材ライターや医療系介護メディアの編集長業務、キャリアスクールでの講師メンター業などを経て2020年よりオンライン動画講座「医療ライターのはじめかた」メディア「MediJump」の運営を開始。2022年より医療×Webクリエイターの交流コミュニティ「MediWebラボ」をスタート。2023年に法人化し、経済産業省JStarX起業家プログラム等に採択。「医療資格は、ずっと味方」をテーマに活動しています。