漢方の仕事に興味はあるものの、未経験でも本当にやっていけるのか不安に感じていませんか?
漢方相談では、漢方の知識だけでなくコミュニケーションスキルも欠かせません。相手の話をじっくり聴く「傾聴力」、的確な質問をする「質問力」、具体的なアドバイスを通じて行動を促す「フィードバック力」の3つは、とくに磨いておきたいスキルです。
この記事では、漢方相談で役立つ3つのスキルを詳しく解説するとともに、漢方薬剤師として実際に相談を受けてきた筆者の体験談もご紹介します。
薬剤師ライター山川裕子さん
漢方の知識が豊富で話しやすく、アドバイスもわかりやすい専門家は、患者さんから強い信頼を得られるでしょう。
これから漢方の仕事に挑戦し、患者さんの健康に貢献したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。


漢方相談の仕事で役立つ3つのスキル


漢方相談を仕事にするには、漢方の専門知識だけでなく、患者さんをより深く理解するためのコミュニケーションスキルも欠かせません。とくに役立つのが、「傾聴力」「質問力」「フィードバック力」の3つです。
患者さんに適切な漢方薬やケアの方法を提案し実際に取り入れてもらうためには、相手の体質を正しく見極めたうえで、納得感のあるアドバイスをすることが重要です。



山川裕子さん
実は傾聴力・質問力・フィードバック力の3つのスキルは、対話を通して相手に自発的な行動を促す「コーチング」の基本とも共通しています。
3つのスキルついて、詳しく見ていきましょう。
傾聴力
傾聴力とは、相手の話を「よく聴く」力のことです。英語では「Active Listening」と呼ばれており、アメリカの臨床心理学者カール・ロジャースが提唱したカウンセリング技法となります。話の内容だけでなく、表情や身振り手振りにも注目し、相手の真意を探る聞き方です。[1]
傾聴が上手な方は、相づちや共感の言葉、鋭い質問を通して相手の本音を引き出していきます。こうすることで、信頼関係が自然と構築されるでしょう。



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また、「もっと話したい」と思えるような雰囲気を作り出せるため、相手への理解が深まり、満足度の高いサービスを提供できる可能性が高まります。
質問力
質問力とは、相手に的確な質問をする力のことです。質問力を身につけると、相手の潜在的な考えを引き出して、自分が知りたいことを明確にできるメリットがあります。[2]相手をより深く理解できるため、ニーズに合った提案につながるでしょう。
さらに、質問すること自体が「私はあなたに関心がある」とのメッセージでもあります。質問された相手は安心感を得て、心を開きやすくなるでしょう。



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ただし、初歩的な質問や質問の数が多すぎると、相手に嫌がられる場合もあるため、バランスを意識することが重要です。
フィードバック力
フィードバック力とは、相手の考え方や行動に対して評価や改善点を伝え、成長や改善を促す力のことです。[3]自分自身を客観的に見るためには、他者からの的確なフィードバックが欠かせません。優れたフィードバックは、悩み解決への近道になるでしょう。
フィードバックには、以下の2種類があります。
| フィードバックの種類 | 意味 |
|---|---|
ポジティブフィードバック | 良かった点に注目し肯定的に伝える |
ネガティブフィードバック | 改善点や問題点などを指摘する |



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どちらかに偏るのではなく、両者をバランスよく使い分けることが大切です。
【体験談】漢方カウンセリングにおける3つのスキルの応用


漢方薬剤師としてオンライン漢方相談を受けてきた筆者も、傾聴力・質問力・フィードバック力の重要性を実感しています。3つのスキルを発揮することで、患者さんは理想とする成果を得やすくなり、満足度が高まるだけでなく健康改善にもつながるのです。



山川裕子さん
ここからは筆者の体験をもとに、どのような場面で3つのスキルが活かされてきたのかをまとめました。
漢方相談の流れを想像しながら、ぜひ参考にしてみてください。
真の悩みを引き出す「傾聴力」
漢方相談ではまず、患者さんから不調や健康上の悩みを聞き出すカウンセリングを行います。とはいえ、自分の体や心のことを初対面の人に話すのは、誰でも抵抗がありますよね。



山川裕子さん
筆者の漢方相談では、できる限りリラックスできる雰囲気を作り出し、相手に寄り添いながら話を伺うことを第一に心がけていました。
具体的には、緊張を和らげるために子育てなど日常の話題から入り、体調の話へとつなげるようにしていました。
相手の状態や本音を正しく理解するためには、「傾聴」の姿勢が不可欠です。
体質を深掘りする「質問力」
漢方カウンセリングでは、体全体の状態や生活習慣について細かく聞き取っていきます。一人ひとりの体質を正確に見極めるためには、質問の仕方が重要です。
たとえば頭痛や肩こりに対しては、「どのような痛み?」よりも「ズキズキ?それとも雨の日に重だるくなる感じ?」などと具体的に質問します。



山川裕子さん
筆者も漢方相談を行う中で、表現を少し変えたり質問の意図を伝えたりすると、患者さんが答えやすくなることを実感しました。
行動を後押しする「フィードバック力」
カウンセリングの最後には、体質に合った漢方薬を提案するとともに、生活習慣の見直しやセルフケアについてもアドバイスします。
ただ「痩せましょう」と伝えても、そもそも危機感がなければ行動に移せません。「なぜ必要なのか」「どうすれば無理なく続けられるか」を具体的に伝えることにより、まずは「ごはんのおかわりを控えよう」と実践できたケースがありました。



山川裕子さん
このように、相談の成果はフィードバックの内容に大きく影響を受けるでしょう。
未経験から3つのスキルを磨く方法


傾聴力・質問力・フィードバック力を磨くには、独学で学ぶ方法や、実践を通してアウトプットしながら高めていく方法があります。
コミュニケーションスキルは、一朝一夕に獲得できるものではありません。継続して取り組める環境を用意して、日々スキルを磨いていくことが必要でしょう。



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ここでは、未経験の方でも取り組みやすい3種類の方法をご紹介します。
書籍やオンライン記事で学ぶ
傾聴力・質問力・フィードバック力に関する書物やオンライン記事*を読むことで、各スキルの内容や基本的な実践方法をインプットできます。3つのスキルに共通する「コーチング」に関する文献からも、一通りの学習が可能です。
多くの文献には会話のやりとりなど具体例が示されているため、実際の相談場面をイメージしながら理解を深められるでしょう。



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ただし読むだけでは受動的な学習にとどまりやすく、知識は得られても実践力を高めるのは難しいかもしれません。
1on1で実践する
1on1とは、1対1で行う対話を意味します。ビジネスにおいては上司と部下の間で行われる場合が多いものの、知り合いや友人間でお互いの理解を深めるために行う場合もあります。
2人の間で信頼関係が築かれてはじめて心の内面まで話せるようになるため、傾聴力・質問力・フィードバック力の3つのスキルは欠かせません。
これらのスキルを意識しながら1on1を繰り返し行うことにより、スキルのブラッシュアップが期待できるでしょう。
Medi+オンライン漢方相談のはじめかた講座内のロールプレイングで練習する
漢方を学べる講座の中には、実際のカウンセリングを想定したロールプレイングが組み込まれているものがあります。漢方の基本知識と相談スキルを同時に学べるため、現場でそのまま使える実践力を習得できる点が大きな魅力です。



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将来的に漢方相談を目指したい方には、傾聴力・質問力・フィードバック力を最も効率的に身につけられる方法だといえるでしょう。
医療者専用リスキリングスクール「Medi+(メディタス)」で開催中の「オンライン漢方相談のはじめかた講座」では、受講生同士2人1組でロールプレイングできる機会が設けられています。現場に近い形で練習したい方は、こうした講座を積極的に活用すると良いでしょう。
3つのスキルを使用する際の注意点


漢方相談を実施してきた筆者の経験から、傾聴力・質問力・フィードバック力を実際の相談で活用する際には、次の点に注意すると良いでしょう。
- 患者さん一人ひとりの立場を尊重する
- 専門知識を押しつけない
- 安心して話せる雰囲気をつくる
漢方相談で最も重要なのは、患者さんとの間に信頼関係を築くことです。
悩みを抱えた患者さんは、専門家にすぐ心を開いて話せるとは限りません。多くの場合は一定の時間を要します。



山川裕子さん
だからこそ、患者さん一人ひとりに異なる背景や事情があることを理解し、寄り添いながら丁寧に会話を進めていくよう意識しましょう。
3つのスキルを磨いて漢方の仕事に挑戦しよう


漢方相談の仕事を新しくはじめるには、漢方に関する専門知識に加えて傾聴力・質問力・フィードバック力の3つのコミュニケーションスキルが重要です。



山川裕子さん
たとえ未経験であっても、学びと実践を積み重ねることにより、スキルは確実に磨かれていきます。
漢方の仕事に興味がある方は、漢方の知識習得とあわせて3つのスキル磨きも意識しながら挑戦してみましょう。
オンライン漢方相談のはじめかた講座
漢方の歴史・現状、営業形態やオンライン店舗見学、勉強方法、ロールプレイングまで実践的に習得できる講座です。医療現場での専門知識や経験と漢方知識を掛け合わせて働きたい方に特におすすめです!










