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キルギスで薬剤師国家試験を作成!学校法人医学アカデミーグループの大理さん【後編】

こんにちは!“自分らしく、楽しく、おもしろく”働く、全国の医療従事者を紹介するメディア、「Medi Jump」です。

今回は、学校法人医学アカデミグループの大理さんにお話を伺いました。
薬剤師国家試験予備校として有名な薬学ゼミナールのグループ会社、学校法人医学アカデミーグループで働く大理さん。新卒で入社しどんなキャリアを歩まれているのか、キルギスでの薬剤師国家試験作成の裏側、学生時代の話から将来の展望までたくさんお話していただきました!

インタビュアー

松岡マイ

前編記事では、自己紹介キルギスでの薬剤師国家試験作成について伺いました。
後編記事では、人生を考えたターニングポイント現在の働き方これからの展望について伺っています。

人生を考えたきっかけ・ターニングポイント

写真提供:大理さん

ーー大理さんの今までの人生を通して、ターニングポイントや自分の人生の変わったきっかけがあれば教えてください。

僕は、自分の中でなにか考え方がまとまると、一直線に行動するという癖があります。
学生時代、実習中に医療とビジネスの違いに気づいたこともターニングポイントになるかもしれません。今の少し変わったキャリアになったきっかけですね。

医療とビジネスの違いに気づいた薬局実習

実習自体は楽しく、チャレンジもできる環境で、学生ながら薬剤師としてのうれしい経験もありました。しかし、医療は、調剤報酬と診療報酬に左右される分野だなと思っています
調剤報酬と診療報酬というルールを行政が定めて、その制限がある中で実施していく働き方だなと。

そこで求められる優秀な人の定義は「リスクを察知できる人間」だと思いました。
薬剤師の仕事である「処方箋の間違いを探す」という点でも、リスクがありそうなことを上手に察知できる危機管理能力に長けている人物が、患者さんに貢献できる人だと思ったんです。

僕は猪突猛進タイプで何でもやってみたいタイプで、危機管理能力ゼロなので、当時は「自分の性格と合っていないのでは」と感じました
ビジネスモデルを作って、チャレンジしていく環境の方が合っていると思ったんです。

ーー臨床ではなくビジネスよりの就職先を選んだきっかけだったのですね。

いろんな社会人の方と話す中でも、薬ゼミには「子供みたいに瞳を輝かせる人」が多いなと思いました。薬学生、薬剤師のためにチャレンジしたいという方が多いんですよね。純粋に、「この人たちと一緒にお仕事したいな」と思いました。

医療とビジネスの違い、自分の適性がなにかを考えて、今の就職先を選びました。

ーー臨床薬剤師の働き方を深く理解されて、自分の向き不向きと照らし合わせて自分に合う会社に入ったという流れだったんですね。

働いてみて、「医療行為」と「事業を回すこと」は違うなと感じます。
事業はトライ&エラーの繰り返しで、やってみてそのあと軌道修正する能力が大事です。でも医療でトライ&エラーはダメじゃないですか

「とりあえずこの薬を飲んでみて、やっぱり違うかも」と言われたらすごく無責任で嫌ですよね。結果として、今いる分野が自分にあっているのかなと思っています。

薬剤師の世界が広がった、友人からの説教

写真提供:大理さん

大学3年生で友人に説教されたことも、ターニングポイントのひとつです(笑)
でも、薬剤師という職業を好きになったきっかけでもありました。

僕は、基本的にすごく面倒くさがりな性格で、できるかぎり勉強はしたくありませんでした。
できるだけ勉強しない方法を考えた結果、授業中に死ぬほど勉強して、それ以外は遊ぶという生活になりました。するといつの間にか、大学で5位以内の成績をとっていました。
でも「今、勉強を頑張って将来何とかなるのかな」とふと漠然とした不安を感じるようにもなったんです。それが3年生の頃ですね。

当時、いろんな薬局にインタビューしたり、企業さんと就活セミナーを一緒に開いたりしていたすごく活発な友人がいました。全国の薬学生が集う学生団体の日本薬学生連盟に入っている子だったんです。

その友人に、ある日すごく怒られました
「お前は、成績は良いかもしれないけれど、世の中のことは全然知らないでしょ。今薬剤師会がどうなってるのか知ってるの、病院薬剤師会の関係とか知ってるの。そういうのも知らない社会人とかありえなくない?」とものすごく怒られたんです。

僕も素直なので「確かにそうだな」と思い、直ぐに日本薬学生連盟の活動に参加しました。そこからいろんな薬局薬剤師さんや病院薬剤師さん、行政の方とお話しする機会が一気に増えて、薬剤師が好きになりました

ーーそうだったんですね、そのご友人も、大理さんが賢いからこそもったいないなと思っていたのでしょうか。

それが、違うんですよ。
その時は、「3年生の今から就活やっていないともう遅いからな。もう遅いけど、今から日本薬学生連盟に入れば間に合うよ」というふうに言われました。
何をもって間に合うというのか人によって違いますが、今思い返すと、さすがに薬学部の3年生なら就活は間に合います。

あとでその友人に「一緒に活動する友人が大学内に欲しかったから、ぶっちゃけお前を騙した。ごめん(笑)」と謝られました
ある意味詐欺に引っかかった状態でしたが、結果として、薬学に思いを馳せる熱い友人・社会人とご縁ができたので、結果オーライだと思っています。とても良い学生生活でした。

ーー友達にがつんと説教されたことで、将来や薬剤師について考えるきっかけになったんですね

そうですね。「自分の将来をちゃんと考えないと」と本気で思いました
そのあと、その友人と3年間ぐらいシェアハウスで暮らしましたが、頭の回転が速くて痛いところをつくし、私の行動にいちいち指摘してくる人で。でも、その友人に言われたことは「言われたら納得できる内容」だったんです。常に人生を考えるシェアハウスにいた感じでした。

3年間ひたすら説教されて、人格否定までされたおかげで超ドM耐性が付きました。今では、薬学業界のM分野(?)において、トップランナーでいる自負があります。どんなことでも怒らなくなりましたね。

失敗を自分で乗り越えたことはない。謙虚でいる姿勢が大事

写真提供:大理さん

ーーいろんなご経験や働き方をされているなかで、辛かったご経験はありますか?

実は毎日のように、辛かったことや失敗したことが起こっています
笑っちゃうぐらい「これマジか」と思ったのは、キルギスで部下から顔面平手打ちにあったことでした。キルギスの方に「お前マネジメントがなってねえよ」とビンタされました。
彼女に指摘された通り、偉そうな話し方をしていたり、頼って当たり前だと思っていたりと原因は私にありました。

最近も毎日失敗していて、昨日も事前共有せずに全体メールを発信して怒られましたね。
僕は猪突猛進タイプで、気をつけないとなと思いつつも頭をぶつけて怪我をすることが多くあります……

ただ、毎回「自分の力で乗り越えた」と思うことは1回もなくて、いつもいろんな人に助けられています
素直に謝って、反省して悪かったところを分析して、きちんとそれを周りの人に話していたら、周りの人がチャレンジしている姿をみていてくれて助けてくれることが多いんです。
だから失敗は自分で乗り越えなくてもよくて、誰かを頼るのもいいのかなと思っています。

学生の頃は“謙虚”という言葉を「反省して成長につなげる」という自己視点のみで捉えていましたが、今は意味が変わりました。謙虚でいると、見てくれている周りの人が「この人は嘘をつかない人だ」と支えてくれます

乗り越えたことはなくて、謙虚でいたから助けてくれたんだと思っています。
ただ頼り続けてもいけないので、“挑戦する背中を見せ続ける”ことが私の信条ですね。
逆に、誰かが困っていたら助けてあげたいと心から思います

ーー事業開発をはじめいろんなことにチャレンジされている姿勢や頑張っている姿を見て、助けたいと仲間が集まってくるんだなと感じますね。

いやぁ、本当にありがたい。人に恵まれたと思います。

キルギスではロシア語も英語もしゃべれなかったので、一人では生活できませんでした。
電気の契約もできないし、携帯の契約もできない。デヴィッドカードなんてATMに4回吸い込まれ、財布と携帯は各3回落としましたけど、周りの助けもあって対応できるようになりました。毎日助けられていますね。

大理さんの現在の働き方

写真提供:大理さん

ーーキルギスから戻られたあとの、現在の働き方を教えてください。

平日は9時半に出社して、仕事がスタートします。
私は企画系のお仕事が多いので、会議がほとんどですね。

たとえば、メディア運営の仕事だったら記事のネタ、マーケティング施策を考えて同僚と相談して実行していきます。広告の手法を考えて分析したり、記事を作るために取材したりしています。

取材に関しては、読者に調査して聞きたい話を探ったうえで、学生の時のつながり(薬学生連盟等)を通じて出会った尊敬している先生や先輩、同期、後輩に会いに行って取材しています。

ここに関してはほぼ公私混同ですね(笑)
でも、あの時の友人の多くは薬学業界で活躍しているので、取れ高は最高に良いです
友達に会いに行く感じで、取材を通して「今こんなことやってるんだ、面白いね」と楽しくやっています。

夜は早くて18時、企画に熱が入った時は夜遅くまで残ることもあります。
そのあと週3~4回Twitterで会った人たちと一緒に飲んで、だいたい夜は気絶して寝るという毎日ですね……。

ーーTwitter拝見していてそんなイメージはありました!周りにいろんな人がおられるんですね。

職場は薬剤師だけではなく文系の方もいます。薬剤師の方もいろんなバックグラウンドをもった人が多いので、富士サファ○パークみたいな、いろんな動物がいる感じですね(笑)。

……愚痴を言いたいんですけど、愚痴がでないんですよね
もっと悪いところ出そうよ!というのが僕の職場の愚痴かもしれないです。本当にいい人が多いですね。

大理さんのこれからの展望

写真提供:大理さん

ーーありがとうございます。
大理さんがお仕事の面で今後やっていきたいことはありますか。

臨床で頑張っている人ってやっぱりかっこいいな、私にできなかったからこそ凄いなあと思っています。

頑張った人が損をする構造をなくしたい

この業界って、頑張れば頑張るほど損する構造になっているなと思っています
お金を払って学会に行って発表しても、給料は上がりません。

どうしてかというと、薬局や病院の収入源が、調剤報酬や診療報酬に依存せざる得ないからかと。1日に見られる処方せんは薬剤師1人につき40枚という制限などがある以上、給料があがるわけないんです。でも処方せん枚数制限が40枚から上がっても、1人が1日に見られる患者数には限界があります。処方せんをさばくほどいいのかというのは、また別の議論だと思います。

そのため、もっと違う形で、頑張る人の対価としてお金が付くべきだと私はすごく強く思っています

たとえば学術系で発信している人を積極的に講演や記事に呼びたいし、提供した教材を使って教えている人に報酬を払うという文化を作りたいと思っています。
臨床で頑張っている人が稼ぐこともできるロールモデルができて、そうやって「頑張った人が損をする構造」をなくすことが職場でやりたいことの1つですね

非言語の分野でやりたいこと

写真提供:大理さん

ーープライベートでも、今後やりたい活動はあるのでしょうか?

プライベートでは、海外を舞台になにかやりたいなと思っています。具体的には決まっていませんが、非言語の分野でやると決めていてイラストか音楽だなとは考えています。

海外に行って体感したのですが、DJの面白さに衝撃を受けました。
DJが流す曲には歌が入っているものと入っていないものがありますが、僕が好きなのは歌が入っていないほうなんです。
歌が入っていないと歌詞の解釈は要らないので、音楽の質だけで勝負できますよね。

イラストも一緒なんです。イラストも言語を介さず視覚からの情報のみなので、海外でもやりやすそうだと思っています。

ーー確かに非言語だと、世界中共通ですよね。DJやイラストに決めた、何か原体験があったのでしょうか。

DJと聞くと、はじめは何も考えていない人が踊っているだけなんだろうなと思っていました。今思うと失礼ですし、馬鹿だったなと反省しています(苦笑)。これは、体感してみて、気がついたことなんです

音楽を聞きながら、次は低音でくるのか高音で来るのか、スピードは速いのか遅めでくるのか、DJにはいくつも選択肢があるんです。ここは絶対音を盛り上げに来るなと予想してそのタイミングでジャンプしてやろうと思うことが「音に乗る」ということだと教えてもらって以来、音をよく聞くようになりました。

でも、リズムに慣れてきたと思ったら、次はタイミングを変えてくるんです
そのときにDJの人と目線が合って「中島さんはまりましたね」とにやりとするんですよね。その瞬間に「くそー。そうくるかぁ。面白い……!」と思いました。
あくまで、僕の解釈部分もありますが、これがDJの曲を楽しむ方法だと思っています。

イラストについては、キルギスに行った時にコミックアートの服を日本からたくさん持ってきていたんですよね。
それを着て海外の人と会うと「その服どこで売ってるの?いくらくらいなの?」「日本で100ドルだよ」「こんなめっちゃいいイラストが100ドルなの、俺500ドル払っても買うよ」と言われていたので、日本の漫画文化はやっぱり海外で人気があるなと思いました。

とくに、日本のコミックは本当に海外で人気なので、マーケットは日本ではないなと思っています。実際やってみて自分が好きか、ちゃんと完成度の高いものを作れるのかが優先されるので、今はその種類を見極めているという感じですね。

ーー面白いと思った原体験から深掘りして、次につなげているんですね。

好きなことは、もうどんどん考えてしまいますね!

やりたいことの見つけ方

写真提供:大理さん

ーーやりたいことをどんどん見つけていらっしゃいますが、元々やりたいことがあったというよりは新しい環境ごとに見つけていかれているのでしょうか。

元々、やりたいことがあったタイプではないです

僕は直感タイプですが、頭の中で整理するタイミングはたくさんあります。
たとえば、おしゃれなカフェに行って美味しいコーヒーを飲んで感動したとすると、「なんで感動したんだろう」と自分の中で分析をはじめます。
「このコーヒーの酸味が好きだったのかな?じゃあ酸味のあるコーヒーを極めよう」と思ったり、「この空間が好きだったのかな」と空間デザインについて考えてみて、次は展示会に行ってみたり。心が動いた瞬間を見つけては、論理立てて好きなことをみつけています

無理に探そうとするのではなく、なんでもいいんです。
たとえばマラソンをしているときに「最後の1キロってめっちゃ楽しいな、この1キロを体験できるのは他に何かあるのかな」と考えて、きつめの筋トレはどうだろうと仮説を検証して違うなと思ったら辞める。とりあえず感動した瞬間に出会えると、どんどん仮説を検証して分析しています

ーー考えてやってみて、失敗したのであれば改善してとぐるぐる回していくスタイルが、新規事業との関わり方にすごく似ているなと感じます。

問題は飽き性なところですね……。来年は言っていることがまた変わっているかもしれません(笑)。

今後挑戦したい方へのメッセージ

ーー最後にこれから挑戦したいと考えている医療従事者の皆さんにメッセージをいただいてもよろしいでしょうか。

偉そうに言える立場ではありませんが、チャレンジして成功するかしないかは結論から言うと「運」だと思います

僕自身、学生の頃は、自分が海外へ行くとは思ってませんでした。だって、英語も話せないんですよ……!(笑)

海外に行きたいとも思っていなくて、でも実際に行ってみたら楽しかったです。
チャンスは結構たくさんあるんですよ。チャンスや運というのは、結局行動の数を稼いで情報をいれていくほど増えていきます

ただ、直感で「明らかに面白い」と思ったことは、絶対に競合がいるという意識を持って「ここを取るのは自分だ」と最速で行動することが大事だと思いますね

私もまだまだチャレンジしていきたいので、皆さんに教えていただきたいです。

ーーたくさん質問にお答えくださって、ありがとうございました!

取材・編集:松岡マイ

大理さんのSNS

Twitter:https://twitter.com/dairi0301
このインタビュー後に再度、キルギスへのプロジェクト参加が決まり発信中です!

この記事の執筆者

薬剤師ライター:中川 あやさん

大阪薬科大学卒。地元の調剤薬局で薬剤師として従事する傍ら、ライターにも挑戦。
”いつでもどこでも働ける”を目指して自分の働き方を模索中。「読んだ後、その先の行動へつながる記事」を目指して執筆しています。

SNS(X):https://twitter.com/laugh_a_a
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メディア運営・編集

京薬卒、(株)Medited代表取締役。 医療・取材ライターや医療系介護メディアの編集長業務、キャリアスクールでの講師メンター業などを経て2020年よりオンライン動画講座「医療ライターのはじめかた」メディア「MediJump」の運営を開始。2022年より医療×Webクリエイターの交流コミュニティ「MediWebラボ」をスタート。2023年に法人化し、経済産業省JStarX起業家プログラム等に採択。「医療資格は、ずっと味方」をテーマに活動しています。