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フリーランス薬剤師×フォトグラファー。人生と働き方を選択するゆーまくん

「フリーランス」と聞くと、WebライターやWebデザイナーなどのパソコンひとつで仕事が完結するものばかりで、私たち医療従事者からは遠い世界だと思ってしまいますよね。今回インタビューをしたのは、フリーランス薬剤師とフォトグラファーという、ふたつのスキルを組み合わせた働き方をしているゆーまくん。

医療資格があるからこそ実現できる、フリーランスという自由な働き方を実現するための道のりや営業の秘策を伺いました。

フリーランス薬剤師×フォトグラファー、ゆーまくんの自己紹介

写真提供:ゆーまくん

ーー本日はお時間ありがとうございます。まずは、簡単な自己紹介をお願いします。

フリーランス薬剤師でフォトグラファーのゆーまです。
薬剤師としては5年目で、3年半のドラッグストア勤務ののち、独立してフリーランス薬剤師になりました。フリーになってからは1年半で、今まで契約した薬局の店舗数は8つほどですね。

フリーランス薬剤師になったのと同時期に、それまで趣味のひとつだったフォトグラファーのお仕事でもお金をいただくようになりました。フォトグラファーとしての働き方は、振袖のスタジオで専属フォトグラファーをしたり、HP用の写真を撮ったり、家族写真を撮ったりしています。また、業務委託で映像制作もしています。

今は、薬局経営のお話をいただいたことにより、フリーランス薬剤師の拠点となる薬局を目指しています

人生を考えたきっかけや、ターニングポイント

ーー今までに、ゆーまくんにとってのターニングポイントや、自分の人生が変わったきっかけなどがあれば教えてください。

新卒で入社したドラッグストアで1年目の終わり頃、会社のプログラムでアメリカ研修に行かせていただいたんです。「日本の薬局業界もこんなふうに進んでいくのか」と視野が広がりました。もっといろんな働き方や薬局の店舗をみたいなという気持ちになったんですよね。

社会人になってから再開した写真に以前よりもハマってしまったことや、収入源が1つしかないことに恐怖を感じたことも、働き方を考えたきっかけの1つでした。

活動する中で辛かったことや、乗り越えた方法

写真提供:ゆーまくん

ーーフリーランス薬剤師やフォトグラファーをする中で、辛かった経験などはあったのでしょうか。

新しい人間関係の構築、慣れない機械(分包機や電子薬歴など)の操作、各会社や店舗のルールを覚えること、いつも以上にミスは許されないプレッシャーなどは、フリーランス薬剤師として働く上でのきつい部分ではあるかもしれません。何よりも、体調管理に気をつけています。ヘルプで入ることが多いのでそこで穴を開けるわけにはいきません。

そんな中で僕が1番きつかったことは、フリーランス薬剤師になって2ヶ月目に入ろうとしたときに、コロナによる緊急事態宣言が発令されたことでした。お仕事に入ると予定していた1週間前に、その後1ヶ月分のお仕事が無くなってしまったんです。

僕は正社員時のボーナス1ヶ月分だけを持って仕事を辞めたのですが、「これはやばい、フリーランス薬剤師としての活動は続けられないかもしれない」と焦りましたね。「経費になる」と思ってクレジットカードも結構使っていたので……。フリーランス薬剤師の友人の中には、コロナ禍で活動を続けられなくなった方もいましたね

フリーランス薬剤師という自由な働き方だからこそ、「すべて自己責任で誰も何も保証はしてくれない」というきつさがあったなと思います。

ーーそんな大変な時期もあったのですね。当時は、どうやって乗り越えられたんでしょうか。

そのときは、知り合いで薬局経営をしている先輩のところに声をかけて、ちょこちょこ薬局に入ってお仕事をさせてもらいました。「もし人手が足りない時や急用ができたら呼んでください!」と、たくさん声もかけていましたね

あとは、薬剤師の仕事がなくなった分、フォトグラファーと映像制作のお仕事を入れて食いつないでいました。逆に映像制作とフォトグラファーの仕事が1ヶ月なくなった時もあったので、収入の柱を複数持っていることに助けられています。いや、本当に当時は、なんとか乗り越えられてよかったです。

フリーランス薬剤師という働き方について

ーーではさっそく、ゆーまくんの働き方の1つである「フリーランス薬剤師」について、ご質問させていただきます。

はい、よろしくお願いします!

正社員からフリーランス薬剤師に至るまで

ーーもともと、薬剤師を志たきっかけを教えていただけますか?

小学校6年生の頃に、母が乳がんを患ったんです。抗がん剤治療の副作用で苦しむ姿を近くで見ていて……。病気を治したいと考えたときに、もちろん医師として携わることも考えたのですが、最終的に病気を治すのは薬の力だと感じました。薬の可能性を見出したというか。中学校3年生の進路決定の頃には薬剤師の道へ進むと決めました。

ーー安定しているドラッグストア勤務から、フリーランス薬剤師に挑戦したのはどうしてですか?

自分で人生の選択ができるように、自由になりたいと思ったんです
最初に勤めていたドラッグストアは週6日勤務で休みが少なく、自分の時間を確保できなくて……。副業も禁止だったので、フォトグラファーとして公に活動できるようにもしたかったんですよね。

それと、当時の部長が一度会社をやめて病院勤務をしてから、また会社に戻ってきた方でした。入社当初から部長になると口にしていた僕は、その道も切り開けるなら一度他をみる選択肢もありだと考えるようになって。このままこの会社に留まるよりも、フリーランス薬剤師として多くの薬局を経験したほうが後々会社のためにも自分のためにもなると思い、働き方を変えることにしました

また、「自分の薬局を持つ」という選択肢も考えていました。フリーランス薬剤師という働き方を通して、全国のいろいろな薬局で処方箋を受け取ってから薬を処方するまでの流れや、薬局ごとに使う機械の違いなどを学び経験値を貯めたかったんです。

フリーランス薬剤師にこだわる理由とは

ーー薬剤師には「派遣薬剤師」という働き方もありますが、「フリーランスの薬剤師」にこだわった理由はありますか?

フリーランス薬剤師の働き方は、薬局にとっても僕にとってもwin-winだと思ったんです。
派遣会社が間に入ると、仲介手数料がかかってしまいます。フリーランス薬剤師としてお手伝いができれば仲介手数料は必要無いので、薬局としては人件費を抑えられるし、もちろん僕も派遣で入るより少しだけ多めにお給料が頂けます

そして、僕にとっては自分で薬局を選ぶことも重要でした。この薬局を助けたい、この地域で働いてみたい、この薬局はどうやって運営をしているのか、自分の気になった薬局で働きたかったんです。

ーーフリーランス薬剤師になると決めたとき、不安はなかったですか?

九州で正社員勤務をしていた頃は、フリーランス薬剤師をしている方に出会ったことがなかったので、仕事があるかどうかは不安でしたね。働き口さえあれば「自分の薬局薬剤師の経験から、どうにかやっていけそう」という自信はありました

正社員勤務の頃は、20店舗の薬局を回るような働き方をしていました。たくさんの店舗で経験を積めたので、店舗ごとの仕組みの違いへの対応や、機械の操作の違いや、ほぼ全部の科を経験できました。お局の方がいる薬局に行くことも多かったのですが、どの店舗でも人間関係で困ることがなかったので、フリーランス薬剤師になってもやっていけそうだなと自信をつけることができました。

とはいえ、フリーランス薬剤師という働き方だと、派遣薬剤師のように会社を通しているわけではありません。調整してくれたり守ってくれたりする人がおらず、全部自己責任になるのは大変ですね

コロナ禍で突然仕事がなくなるなど、自分自身も大変だった経験をしているので、フリーランス薬剤師になりたいと相談を受けたときは、厳しい世界だとお伝えしています。自分で営業ができる人じゃないと、フリーランス薬剤師を続けていくのは大変ですね。

「単純に、稼げるからフリーランスの薬剤師になりたい」など、フリーランス薬剤師になる理由がぼんやりしている方は気をつけてほしいです

営業こそが、フリーランス薬剤師を続ける秘訣

ーー派遣薬剤師と違って、フリーランス薬剤師自身が営業や交渉をしてお仕事につなげるのは大変そうなイメージもあります。

学生の頃、よく友達と一緒に道ゆく知らない人にナンパしたり声をかけたりしていたんです。それが、フリーランス薬剤師のテレアポ営業につながっているのかもしれません。営業でどれだけ断られようが、知らない人にあしらわれようが「あの時に比べたら全然余裕だな!」と思いますね

フリーランス薬剤師になりたてのときは、フリーランス薬剤師を斡旋しているプラットフォームを活用するのがおすすめです。あとは、独立して薬局を経営している先輩に声をかけてみるなど、自分から営業をしていました。

立ち上げたばかりの薬局は、ひとりの薬剤師で切り盛りしているところが多いのですが、少し軌道に乗って安定してくると「週1回くらいは休みをつくろうかな」「急用が入ってしまったので、他の薬剤師が手伝ってくれたらいいな」というタイミングがあります。そんな薬局経営者へ「週に1回、僕が入ります!」と声をかけられればいいですよね。週1回お手伝いする薬局をいくつか獲得できれば、稼働できる日数も増えていきますよ

ーーゆーまくんは、どんな流れでお仕事につなげているのでしょうか。

SNS経由やフリーランス薬剤師仲間からの紹介でもお仕事をいただいた経験があります。タウンワークなど求人サイトに載っているとこにテレアポをしたこともありますし、卸やコンサル関係の人とつながってお仕事をいただくこともありました。

フリーランス薬剤師は比較的新しい働き方なので、「フリーランス薬剤師は入れたことないです」という薬局も多いですし、知らない人を突然薬局に入れるって不安だと思います。なので、「1回だけお試しで、僕の働きぶりを見てください」と声をかけています。1回働きぶりを見てもらって、問題なさそうかどうかを判断してもらっていますね。

フォトグラファーとしても活動し、薬剤師の収入だけに依存しない働き方へ

写真提供:ゆーまくん

ーー次に、フォトグラファーのお仕事について伺います。フォトグラファーは、どんなきっかけで活動をスタートしたのでしょうか?

もともと、薬剤師の収入だけに依存したくない思いが根本にありました。そのため、何気ない一瞬の表情や思い出を残せるフォトグラファーの仕事を、もう1つの収入の柱にしていこうと思いました。

大学生の頃から趣味で写真を撮っていました。いい写真だね、ありがとうって、感謝されることがとても嬉しかったので、フォトグラファーになりたいと思ったんです。

ーーフォトグラファーのお仕事が軌道に乗るまでは、どんな流れだったのでしょうか。

フォトグラファーとして駆け出しの頃は、有料にしてもいいのか自信が持てませんでした。最初は、友人の撮影からお金をいただくようになったのですが、いただいた金額分のお返しをプレゼントをして自分の中でモヤモヤを消化していました。友人の撮影を重ねていくことで、ポートフォリオ用のサンプル写真も集められました

その後、「薬剤師だけの収入に依存したくない。フリーランスになるなら生計は立てないといけないし、投資したカメラ代は回収したい」と思い、お仕事として活動を続けています。無料だと、お客さん側も適当になってしまうことがあるし、お金をいただくことでよりプロ意識がもてるなと感じています。

いただいたお金で機材などもグレードアップできるので、さらにお客さんにいい写真を提供できるようになったことも嬉しいですね。お金をいただくこと以上に、その人たちの思い出を残して喜んでもらえることにやりがいを感じています。

ゆーまくんの1日スケジュール

写真提供:ゆーまくん

ーーフリーランス薬剤師とフォトグラファーと掛け合わせて働くゆーまくんの、現在のスケジュールについて教えてもらえますか?

1日の中で働き方を分けるのでなく、フリーランス薬剤師とフォトグラファーどちらかの仕事をしているときが多いです

基本的には「この日は薬剤師の仕事、この日はフォトグラファーとしての仕事」みたいなイメージですね。たまに、午前中は薬剤師、午後はフォトグラファーとか、それが逆になる日もあります。撮影後の編集は空き時間ができたらこなして行く感じですね。

今フォトグラファーとして専属で契約している振袖のスタジオは、大元の会社が薬局なんです。薬局とスタジオが同じモールの中に入っているので、撮影の予約が入っている時間はフォトグラファー、振袖のお着替え時間は薬局に戻って薬剤師の仕事をするという柔軟な働き方も実現できています。

ーー撮影スタジオは薬局が運営しているのですね。まさにゆーまくんにピッタリの場所ですね!

そうなんです。多分、日本全国どこを探しても、ここにしかないスタイルの薬局だと思います。TwitterのDMで「1回うちで働いてくれない?」と声をかけてもらったことをきっかけに、最初は普通に薬剤師として働いていました。

その後、薬局の社長に「フォトグラファーもしています」と話をしたら、ちょうどスタジオのオープン準備をしていてフォトグラファーも募集しているからそっちもやってみないかと声をかけていただいて、今に至ります。

ーー自分から声をかけたり発信して気がついてもらうことも、大切ですね。

次のステップは、フリーランス薬剤師の拠点となる薬局を作ること

ーー現在、「フリーランス薬剤師の拠点となる薬局の立ち上げ」をされているとのことでしたが、詳しく教えていただけますか?

これからもっとフリーランス薬剤師は増えて欲しいし、一定数まで増えていくと思っています。フリーランス薬剤師である僕自身、甘えかもしれませんがそんな“フリーランス薬剤師の拠点となる薬局”があったらなと思っていたんです。薬局でも薬局の外でも、各個人が持つスキルを活かして欲しいと考えています。

また、コロナ禍によって急にフリーランス薬剤師の仕事がなくなった経験をしているので、「ひとつのスキルだけに依存する働き方は不安定だな」という実感もあります
フリーランス薬剤師それぞれが、僕の薬局で最低限の収入を確保しつつ、空いた時間でカメラやWebデザインなどのやりたいことや新しいことに挑戦して欲しい。薬剤師1つのスキルだけではなく、多様なスキルを組み合わせて生きていける薬剤師を増やす場にしたいですし、僕もWeb関連の仕事を振れるように精進します。

もちろん、目の前の患者のことや薬局への貢献はしてもらいます(笑)。たまに薬局の業務をそっちのけで、自分の副業をする人がいると耳にしたこともあるので……

僕がフリーランス薬剤師をやってみて、1番よかったと思うことは「薬剤師という仕事は楽しいと、あらためて気づけたこと」でした。会社としてやらないといけない事務的なことから離れて、目の前の患者さんに集中できる働き方がとても楽しいなと感じたんです。
人が足りない薬局に入ることが多いため、薬局の人たちから感謝されることも嬉しかったですね。初めての土地に行くのは何歳になってもワクワクするし、そこでの生活を一時的に経験できるのも楽しいです。

そうやって、楽しく柔軟に働けるフリーランス薬剤師を増やしていければと思っています。

ーー時代に合わせた新しい形の薬局ですよね。ゆーまくんは、フリーランス薬剤師を経て、どのような流れで薬局経営に至ったのでしょうか?

今回の薬局経営のお話をいただいたのは、本当に運とタイミングでした。お手伝いしている薬局の社長とお話をする機会があり、フリーランス薬剤師の拠点となる薬局を作りたいという話をさせてもらっていたんです。それから数週間後に「いい案件が出てきたよ」と声をかけていただきました。このタイミングは逃せないと思って、飛び込むことに決めました。

ーー自分の目標を伝えることで、手に入れたチャンスだったのですね。ゆーまくんが、今後さらに目指す姿や目標はありますか?

まずは、やっぱり薬局経営を軌道に乗せることが目標ですね。薬局が安定して僕が自由に動けるようになったら、信頼できるフリーランス薬剤師にも入っていただきスキルを活かしてほしいですし、フリーランス薬剤師を目指す人も増やしていきたいです。

多くの障壁があるとは思いますが、いずれ海外にも薬局を構えたいという野望もあります。バンコクや台湾、タイあたりに!そのときは、ぜひいろんな薬剤師さんに働きに来て欲しいですね。

ーー海外で働きたい薬剤師にとって、ゆーまくんの薬局が新しい選択肢になっていきそうですね!

挑戦したい医療従事者に向けたメッセージ

写真提供:ゆーまくん

ーーフリーランス薬剤師など、今とは違う働き方に挑戦したい薬剤師や医療従事者に向けて、メッセージをお願いします。

免許や資格があることは、本当に素晴らしいと思っています。僕は独立するときに「国家資格があれば失敗してもどうにかなる」という思いが心の支えになっていました。他の業界だと“免許や資格という保証”はなかなかないですからね

もちろん、薬剤師として突き抜けることもかっこいい。それでも僕は、こうやって挑戦していくために免許や資格があってもいいと思うんです。だから、考えすぎないで飛び込んでみてください。きっとなんとかできるし、周りも助けてくれるかもしれません。

ーーたくさんお話してくださり、ありがとうございました!

取材/編集:松岡マイ

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この記事の執筆者

ライター:班目美紀さん

獣医師とインタビューライターのパラレルキャリア。暮らしやキャリアのインタビュー記事を執筆しながら、動物病院に獣医師として勤務しています。
言葉で誰かの背中をそっと押したい!

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メディア運営・編集

京薬卒、(株)Medited代表取締役。 医療・取材ライターや医療系介護メディアの編集長業務、キャリアスクールでの講師メンター業などを経て2020年よりオンライン動画講座「医療ライターのはじめかた」メディア「MediJump」の運営を開始。2022年より医療×Webクリエイターの交流コミュニティ「MediWebラボ」をスタート。2023年に法人化し、経済産業省JStarX起業家プログラム等に採択。「医療資格は、ずっと味方」をテーマに活動しています。